月別アーカイブ: 2015年1月

国鉄国労闘争、解決へ/福田護(事務所だより2010年8月発行第41号掲載)

news1008_small 国鉄の分割民営化からまる23年が経過した去る4月9日、JR発足時の職員採用についての国労・全動労等に対する組合差別問題(国鉄清算事業団解雇者1047名問題)で、ついに政治解決がなされました。民主党・社民党・国民新党の与党三党と公明党がまとめた政治解決案を、政府が受け入れたものです。これに基づいて6月28日、最高裁で裁判上の和解が、国鉄の権利義務をいまにひき継いでいる鉄道運輸機構との間で成立しました。

 これによって、国労・全動労組織としての訴訟事件は終結し、今後、政治解決の一環として政府としても努力すると確認された、対象組合員の雇用確保の実現が課題となります。(なお、後記横浜人活事件関係の不採用者2人を含め、今回の和解を選択しなかった一部組合員の個別訴訟が残ります。)

 しかし、この歴史的闘争が大きな目標に到達したという中間総括は、してよいと考えます。この四半世紀に及ぶ長い間、神奈川総合法律事務所の関係者・関係団体の方々からも、多くのご支援、ご協力をいただきました。事件に関わってきた弁護団の一員として、心より御礼申しあげます。

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あるファーストフード店店長の過労死/大塚達生(事務所だより2010年1月発行第40号掲載)

news1001_small あるファーストフードチェーンの店長が、社内研修の最中にクモ膜下出血で倒れ、亡くなりました。
 「労災ではありません。」という会社担当者の説明に疑問を感じた遺族が、会社から勤務記録を取り寄せたところ、遺族の実感から程遠い残業時間数しか記録されていませんでした。また、おかしなことに、社内研修中に倒れたにもかかわらず、会社の勤務記録には、その日が「公休日」と記されていました。

  遺族が、労働組合の支援を受けて、労災保険給付請求の手続を準備していたところ、亡くなった店長が通勤時に使っていた市営駐車場の磁気カードが見つかりました。そして、それをもとに駐車場の入出庫記録を入手することができました。

 この駐車場は店長が勤務していた店舗のすぐ近くにあり、労働組合が入出庫記録に基づいて、店舗に着く時刻と店舗を出る時刻を割り出したところ、元店長の残業時間数は会社の記録よりもはるかに多くなりました。この時間数は、遺族の実感に合致するとともに、元店長の携帯電話に残されたメールの送受信記録とも内容的に符合しました。

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冤罪と自白/野村和造(事務所だより2009年8月発行第39号掲載)

news0908_small 足利事件の菅家さんは、17年半もの苦しみの後、ようやく釈放された。
 控訴審で弁護側は、DNA鑑定の信頼性や自白の客観的事実との食い違いを指摘したが無期懲役判決がなされ、1996年5月最高裁への上告。
 弁護側は、最高裁に、菅家さんの毛髪のDNA型が犯人のものと一致しないとの鑑定結果や科警研DNA鑑定の問題性を指摘した専門家意見などを補充書で提出し、DNA再鑑定の必要性を主張したが、2000年7月、上告棄却。2002年12月宇都宮地裁に再審請求がなされ、2008年2月却下。そして東京高裁でやっとDNAの再鑑定が認められたものである。

  問題があるDNA鑑定について、最新の技術による再鑑定が拒絶され続けてきたことの重要な原因の一つには、自白に対する過信があると思う。
 死刑や無期になるような事件で自らに不利益なことをいうはずがないという思い込みは多くの人々やマスコミだけでなく、裁判官をも支配しているように思える。

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労災が「自己責任」とされないように/小宮玲子(事務所だより2009年8月発行第39号掲載)

news0908_small Kさんは、業務用電化製品の訪問修理・メンテナンス業務に従事するサブカスタマエンジニア(サブコン)として働いていました。サブコンは、顧客に対する迅速な対応の名のもとに担当地域ごと一人ずつ24時間拘束されて働いていました。会社は、サブコンを会社に拘束して専属的に働かせていましたが、人件費削減のため、社員としては処遇せず、会社との間で「業務委託契約」を結ばせ、完全歩合制で支払いをおこなっていました。

  Kさんは、入社して7年目の平成13年、過労のため脳内出血で倒れました(当時55歳)。今でも半身麻痺、言語障害等の後遺症が残ったままです。
 会社はサブコンに関しては、労働時間管理は一切おこなわず、健康診断も受けさせず、経済面でも健康面でもサブコンの「自己責任」は徹底されていました。
 Kさんは、家族と支援者に支えられ、労災を申請しました。しかし本件では、会社との間で「業務委託契約」を結ばされ働いていたKさんの労働者性がまず認められるのか、そして本件のように、労働時間の管理・記録がまったくない場合、実労働時間をどうみるのかという問題がありました。同じような問題は、本件のように、形式上「業務委託」とされている場合のほか、「請負」とされている場合や、非正規社員、正社員の場合でも労働時間管理がまったくおこなわれていない同様の事案でも多く見られます。

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大きく、そして新しく 第四次厚木基地爆音訴訟/福田護(事務所だより2008年1月発行第36号掲載)

news0801_small 12月17日、厚木基地周辺住民原告6130名の、静かな空を求める訴状が、銀杏の落葉舞う横浜地方裁判所に提出され、第四次厚木基地航空機爆音訴訟の幕が上がりました。
 この訴訟は、空港騒音訴訟で過去最大の原告数による民事賠償請求、そして軍事空港でははじめての「行政訴訟」による航空機離着陸差止請求を試みます。弁護団は26名で構成し、わが神奈川総合からは5名の弁護士が参加します。

 厚木基地は、神奈川県中央部大和市等の人口密集地域のまん中に、2500mの滑走路をもち、507万㎡の広大な敷地を占めて、アメリカ海軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地です。そこに離着陸し、旋回し、訓練する軍用機の騒音に、周辺住民は、もう半世紀にもわたって苦しめられてきました。
 なかでも横須賀を母港とする空母の艦載機が最大の騒音源ですが、この8月にはいよいよその空母の原子力空母への交替が強行されようとしてもいます。  続きを読む