先日(平成27年7月30日)控訴審判決が言い渡された第4次厚木基地騒音訴訟では、将来の損害賠償請求が認められるか否かという点が一つの大きな争点となっています。
民事訴訟法135条は「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。」と規定しており、これが将来の給付の訴えの根拠規定となっています。
金銭等の給付(引渡・明渡等)を求める給付の訴えには、現在の給付の訴えと将来の給付の訴えがあります。
現在の給付の訴えとは、口頭弁論終結の時点において履行を求めることができる状態にある請求権について認容判決を求めるものです。
それに対し、将来の給付の訴えとは、口頭弁論終結の時点においては未だ履行を求めることができる状態にまでは至っていない給付請求権について予め認容判決を求めるもので、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り」認められます。 続きを読む
「裁判」カテゴリーアーカイブ
厚木基地騒音訴訟高裁判決勝訴/福田護(事務所だより2015年9月発行第51号掲載)
30年以上弁護士をしていても、法廷で判決を聞くときの不安定な緊張感というのは変わらない。ましてや、弁護士1年目からかかわり続けてきた事件である。その過程では、第1次訴訟の原告側の請求を、差止めも損害賠償もことごとく棄却した1986年4月9日の東京高裁判決もあった。「もしや」という思いが、いやおうなく脳裏をよぎる。
去る7月30日午前10時、東京高裁は、第4次厚木基地騒音訴訟について、自衛隊機の夜間の飛行差止めを命じた去年5月の横浜地裁判決を維持し、損害賠償については地裁判決と同水準の月額を、過去分だけでなく将来にわたって支払うよう、国に対して命じた。ただし、差止めも将来の賠償も2016年12月末までという期限を区切った。そして、米軍機の差止め請求については、地裁判決同様否定した。 続きを読む
「裁判力」を見直そう/鵜飼良昭(事務所だより2015年1月発行第50号掲載)
2014年は、久しぶりに「裁判の力」を実感できた判決が相次いだ年でした。
5月には、原発の運転差止を認めた大飯原発福井地裁判決と自衛隊機夜間飛行の差止を認めた横浜地裁判決が、10月には妊娠による簡易業務への転換を契機とする降格は均等法9条3項に違反するとしたマタハラ事件最高裁判決が、そして12月にはヘイトスピーチを断罪した1、2審判決を支持する最高裁決定が出ました。
いずれも当事者の血のにじむような闘いに、裁判所が真正面から取り組んで答えを出した判決でした。もっとも大飯原発と厚木基地の判決は一審判決であり、国策の根幹に触れる事案ですから、高裁・最高裁の判決は決して予断を許しませんが・・・。
厚木基地第4次騒音訴訟第1審判決/福田護(事務所だより2014年8月発行第49号掲載)
「旗出し」というのがある。規模の大きい裁判事件でいよいよ判決が出される日、法廷の傍聴席に入りきれない支援の人たちが裁判所の玄関前で、判決の第一報を待ちかまえる。その場所に、法廷で判決結果を聞いた弁護士が、「全面勝訴」とか「不当判決」とか大書した「旗」を持って走り出て、皆さんの前でその旗を開く。しばらくシャッター音が鳴り止まないこともある。ある種の儀式性を帯びた第一報である。
判決の結果によって、大きな拍手が湧き起こり、あるいは怒りの声が渦を巻く。判決の勝ち負けは、大きく重い。人の人生が左右される。だから「旗出し」の儀式には、悲喜こもごもの思いが凝縮される。 続きを読む
大きく、そして新しく 第四次厚木基地爆音訴訟/福田護(事務所だより2008年1月発行第36号掲載)
12月17日、厚木基地周辺住民原告6130名の、静かな空を求める訴状が、銀杏の落葉舞う横浜地方裁判所に提出され、第四次厚木基地航空機爆音訴訟の幕が上がりました。
この訴訟は、空港騒音訴訟で過去最大の原告数による民事賠償請求、そして軍事空港でははじめての「行政訴訟」による航空機離着陸差止請求を試みます。弁護団は26名で構成し、わが神奈川総合からは5名の弁護士が参加します。
厚木基地は、神奈川県中央部大和市等の人口密集地域のまん中に、2500mの滑走路をもち、507万㎡の広大な敷地を占めて、アメリカ海軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地です。そこに離着陸し、旋回し、訓練する軍用機の騒音に、周辺住民は、もう半世紀にもわたって苦しめられてきました。
なかでも横須賀を母港とする空母の艦載機が最大の騒音源ですが、この8月にはいよいよその空母の原子力空母への交替が強行されようとしてもいます。 続きを読む