教育と子ども・若者」カテゴリーアーカイブ

「給特法」を考えよう/嶋﨑量(事務所だより2020年1月発行第60号掲載)

 「給特法」と呼ばれる法律をご存じでしょうか。
 給特法により公立学校の教員は、他の労働者とは異なり残業代が支払われません。
 給特法では、給料月額の4%相当の教職調整額を支給する代わり、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないとされ、いわゆる超勤4項目(①校外実習等、②学校行事、③職員会議、④非常災害等)を除き時間外労働を命じることはできない建前になっています。にもかかわらず、現実には教員の「自発性」による業務遂行とされ、部活動指導等で恒常的に発生する時間外勤務を「労働」とすら取り扱われず、時間外労働が常態化しているのです。

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サマーキャンプ中止問題、無事解決!~旅行業法施行要領が改正~/西川治(事務所だより2019年8月発行第59号掲載)

 たより55号(2017年9月発行)で取り上げたサマーキャンプ中止問題について、原因となっていた旅行業法違反の旅行業法施行要領が改正され、同様の事態が今後起こる心配はほぼなくなりました。

*サマーキャンプ中止問題とは

 2017年夏に、川崎市内の小中学生を対象にしたサマーキャンプ(主催・川崎市教育委員会等で構成する実行委員会)が、「旅行業法に抵触する」という理由で中止に追い込まれたものです。
 このサマーキャンプは1990年から毎夏行われ、長野県、和歌山県など各地で地元の子どもたちと交流しながら自然体験活動を行うというもので、この夏も81人が参加予定でした。
 同様の事例は、神奈川県平塚市、二宮町、開成町などをはじめ、全国各地で発生しました。

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使用者にとってのワークルール教育/石渡豊正(事務所だより2019年8月発行第59号掲載)

 先日、日本労働弁護団のワークルールPTの活動の一環として、中小企業経営者で組織する中小企業家同友会全国協議会(以下、「中同協」と言います。)の方々とお話する機会がありました。
 中同協は、47都道府県の中小企業家同友会の協議体で、設立は1969年11月、会員数は約47,000人(2019年4月現在)です。会員経営者同士の経験交流を主体にした月例会を活動の基本とする団体ですが、その他にも正規雇用を広げることを目的にJobwayという就職情報サイトを運営したり、社員をパートナーとして経営者と社員が共に育ちあう企業を目指す新人社員研修・幹部社員研修などを開催しています(ホームページhttps://www.doyu.jp/より)。

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過労死等防止対策推進シンポジウム/野村和造(事務所だより2019年8月発行第59号掲載)

 全国過労死を考える家族の会の人たちの大変な努力の中で、超党派で過労死等防止対策推進法が成立し、2014年11月1日から施行されました。そのもとで、厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムが各地で毎年開かれています。
 昨年11月の神奈川でのシンポジウムでは、岡田康子さんの「パワーハラスメントを防止するために」と労働安全衛生研究所の高橋正也さんの「働く人はぐっすり眠らなければならない」の講演がありましたが、九州からいらしたAさん(家族の会)の発言は、特別に心に残りました。
 ご本人の承諾を得ましたので、ご紹介します。

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奨学金の「過大請求」-保証人問題/西川治(事務所だより2019年1月発行第58号掲載)

 奨学金制度を実施する日本学生支援機構(かつての日本育英会)が、保証人に対して本来は残債務の2分の1しか請求できないのに、全額を請求しており、中には知らずに全部返してしまった保証人もいる、ということが問題化しています。
 きっかけは朝日新聞2018年11月1日の『奨学金、保証人の義務「半額」なのに…説明せず全額請求』との報道です(私のコメントも載っています)。

 日本学生支援機構が実施している奨学金の大半は、後で返済しなければならない「貸与制」と呼ばれるものです。制度上、「連帯保証人」と「保証人」を1名ずつ用意し、学生本人が払えなくなったときは「連帯保証人」や「保証人」が返済しなければならないこととされています。
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