労働」カテゴリーアーカイブ

ALTの尊厳/山岡遥平(事務所だより2018年9月発行第57号掲載)

1 「ALT」をご存知でしょうか?

 ALTとは、Assistant Language Teacherの略で、日本語では、外国語指導助手となります。
 英語を教える際、教員の助手として業務を行う仕事ですが、外国人がこれを担っています。国のJETという国際交流プログラムを使って来日している方や、その他の民間企業に務め、語学の教員としての派遣・業務委託により授業に参加している方等がいます。 続きを読む

猛毒入り「働き方改革」関連一括法案の「活用法」?!/嶋﨑量(事務所だより2018年9月発行第57号掲載)

◆「働き方改革」関連一括法案は猛毒入り!

 労働側の反対を押し切り、「働き方改革」関連一括法案が成立してしまいました。この法案は、例えるならば、猛毒入りの「毒まんじゅう」です。

 猛毒部分とは、高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)です。一定の高年収者に対して、残業代・休憩など全ての労働時間規制を取り払い、長時間労働を加速させる制度です。安倍政権が「働き方改革」の看板で掲げた長時間労働是正と真っ向から矛盾する制度です。 続きを読む

書評『うつ病休職』/山岡遥平(事務所だより2017年9月発行第55号掲載)

    唐突ですが、精神科医の中嶋聡先生の書いた『うつ病休職』(新潮新書、2017年)の書評を通じて、思うところを書こうと思います。

 さて、本書は、裁判でも、労災でも、医師の中でも一般的に使用されているDSMⅤやICD-10の診断方法を批判し、「経験ある精神科医」の見て取る「質的」違いを重視する(90-91頁)という、(現在においては)一種独特の考えに立っています。そして、この考えに基づき、本来「うつ病」ではない人も「うつ病」と診断する医者が増えており、その診断を利用して、使用者側も労働者側も本質的な問題から逃避し、医者すらその構造に乗っている、と主張します。また、そのような構造を回避するため、著者は抑うつ反応等を「苦悩」としてうつ病等病気と区別し、前者にはむしろより患者側に積極的な回復への取り組みを求め、それを助けるとしています。そして、苦悩の解決には、患者の「主体的決定の余裕が残されている」と著者はいいます(171頁)。

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実践!「ワークルール教育」/石渡豊正(事務所だより2017年9月発行第55号掲載)

 昨年夏の「事務所たより」で「ワークルール教育の教材を作っています。」との表題で、私のワークルール教育に関する取組みを紹介したところ、それを読んでいただいた某女子大学の先生からワークルール教育の講師依頼がありました。

 インターネットがこれだけ普及した時代に、紙媒体の「事務所たより」がどれだけ読まれているのか多少懐疑的となっていた私でしたが、今回このようなご依頼をいただき、「事務所たより」にしっかりと目を通してくださる方々がおられることを認識しました。「事務所たより」の価値も見直さねばならないかと考えております。

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生活時間の視点から労働時間を考える/嶋﨑量(事務所だより2017年9月発行第55号掲載)

 今年4月、第1子・第2子の産休・育休を取得していた妻が職場復帰しました。3年半ぶりの職場復帰です。

 待機児童が社会問題になるなか、幸い子どもらは自宅近くの保育園に入園することができました。子どもらは慣れない保育園生活、妻は久しぶりの職場復帰と、家族の生活スタイルが大きく変わります。このタイミングで、私が短期間ですが育児休暇をとってみました(第2子出産時にも短期間取得し第1子の面倒を見ていたので、私は2度目の経験です)。

 とはいえ、実態は「育児休業」と呼べるほど大げさなものではありません。慣らし保育を終えた妻が職場復帰する4月半ばから、私が子どもの送迎・食事など家事全般をこなしただけです。子どもが保育園に行っている間や就寝してからは通常通り執務していましたし、外せない予定があれば帰宅した妻や親族に任せ仕事を優先することもできました。しかも2週間程度と短期間です。一般的な労働者(特に女性)が取得する育児休業とは全く異なります。

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