労働」カテゴリーアーカイブ

「求人詐欺」問題に取り組もう!/嶋﨑量(事務所だより2016年9月発行第53号掲載)

1 求人詐欺とは?

news201609s 「求人詐欺」問題について、耳されたことはあるでしょうか?
 「求人詐欺」とは、求人票(募集要項)が実際の労働条件と異なる(または、重要な契約内容が十分説明されていない)という問題です。
 例えば、こういったケースです。

  1. ①「正社員」の求人票だったのに、入社後に「半年間はアルバイト」と言われた
    ②「正社員」の求人だったのに、働き始めると「業務委託」だと言われて社会保険にも加入できない
    ③ 求人票には「残業は少ない」と書いてあったのに、働き始めたら月100時間を超える長時間残業があった
    ④ 求人票では「給与25万円」と記載されていただけだが、実際には20万基本給・5万円固定残業代で、長時間残業しても残業代が支払われなかった

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訴訟代理人になるということ/石渡豊正(事務所だより2016年1月発行第52号掲載)

news201601s 昨年は6月と10月に労働事件に関する判決言い渡しを受けました。
  6月の判決の争点は、長時間に及ぶ時間外労働の存否と固定残業手当の有効性でした。また、10月の判決は有期雇用労働者の雇止めの事件で、労働契約法19条1号又は2号の適否が争点でした。
  6月の判決については、時間外労働時間数が多少削られたものの、固定残業手当は残業代の支払いとは認められないという原告の主張が認められました。
 10月の判決では、労働契約法19条1号が適用され、雇止めは無効との判断
がなされました。
  いずれの事件においても、原告の主張が概ね認められ、原告と共に喜び、安堵しました。 続きを読む

残業代による「労働時間規制」はなぜ存在するのか?-残業代ゼロ法は必要ですか-/嶋﨑量(事務所だより2014年8月発行第49号掲載)

news201408_small 労働基準法は、1日8時間・1週40時間を労働時間の最低基準として定め、この最低基準に反する時間外労働に対しては、割増賃金の支払いを義務づけています(労働基準法37条)。
 この残業代に関する労働基準法37条の規定がなぜ存在するのかについては、極めて重要なのに、あまり認識されていません。
 結論からいえば、残業代の支払いを命じるこの労働基準法37条は、長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するために存在するのです(ご存じでしたか?)。
 例えば、以下のケースで、考えてみて下さい。

  労働契約の定め・・・1日8時間労働、賃金・時給1000円
  ある日の労働時間・・・9時間労働(1時間の残業)
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ブラック企業被害対策とワークルール教育/嶋﨑量(事務所だより2014年1月発行第48号掲載)

news201401_small 先日、日本労働弁護団主催で、ワークルール教育に関するシンポジウムが開催されました。パネリストとして、道幸哲也教授(放送大学教授・労働法)、上西充子教授(法政大学・キャリアデザイン学)、POSSE代表の今野晴貴氏、神奈川高教組の加藤はる香氏という、多彩なメンバーが参加され、私もコーディネーターとして参加させていただきました。

 このシンポジウムで一番印象深かったのは、複数のパネリストから、単なる労働法の知識だけではなく、自分の権利を主張する意識を育てることの必要性が指摘されていたことです。職場で何らかの権利侵害(解雇・賃金未払い・ハラスメントなど)を受けた労働者のうち、労働組合や弁護士に相談する方は、本当にごく少数派でしょう。今の日本で働く労働者のうち、職場での違法行為に対して権利主張するのは、残念ながら本当にごく一部の「変わった人」なのです。

 ですが、職場での違法行為に対して、当たり前の権利主張をする人が増えていき、それが「普通の人」になれば、日本の職場に蔓延する「労働法無法地帯化」が改善されていくのではないでしょうか。

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かつて派遣は禁止されていた /石渡豊正(事務所だより2014年1月発行第48号掲載)

news201401_small 若い方の中には、かつて派遣は禁止されていたということを知らない人も多いのではないでしょうか。
 1985年(昭和60年)に派遣法が制定されるまで、労働者派遣は一切禁止されていました。
 派遣法が制定された後も、当初は、常用代替のおそれのない専門的知識等を必要とする13業務のみが対象でした。
 しかし、その後、適用対象業務が徐々に拡大していき、現在では適用対象業務は一部の派遣禁止業務を除いて、原則的に自由化されるまでになりました。


 現在、厚生労働省においては、派遣労働をさらに拡大させようとする動きがあります。

 昨年12月12日に開催された労働政策審議会(第201回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会)では、労働者派遣制度の改正について報告書骨子案(公益委員案)が公表されました(以下では、「公益委員案」とします)。 続きを読む