法改正」カテゴリーアーカイブ

猛毒入り「働き方改革」関連一括法案の「活用法」?!/嶋﨑量(事務所だより2018年9月発行第57号掲載)

◆「働き方改革」関連一括法案は猛毒入り!

 労働側の反対を押し切り、「働き方改革」関連一括法案が成立してしまいました。この法案は、例えるならば、猛毒入りの「毒まんじゅう」です。

 猛毒部分とは、高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)です。一定の高年収者に対して、残業代・休憩など全ての労働時間規制を取り払い、長時間労働を加速させる制度です。安倍政権が「働き方改革」の看板で掲げた長時間労働是正と真っ向から矛盾する制度です。 続きを読む

かつて派遣は禁止されていた /石渡豊正(事務所だより2014年1月発行第48号掲載)

news201401_small 若い方の中には、かつて派遣は禁止されていたということを知らない人も多いのではないでしょうか。
 1985年(昭和60年)に派遣法が制定されるまで、労働者派遣は一切禁止されていました。
 派遣法が制定された後も、当初は、常用代替のおそれのない専門的知識等を必要とする13業務のみが対象でした。
 しかし、その後、適用対象業務が徐々に拡大していき、現在では適用対象業務は一部の派遣禁止業務を除いて、原則的に自由化されるまでになりました。


 現在、厚生労働省においては、派遣労働をさらに拡大させようとする動きがあります。

 昨年12月12日に開催された労働政策審議会(第201回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会)では、労働者派遣制度の改正について報告書骨子案(公益委員案)が公表されました(以下では、「公益委員案」とします)。 続きを読む

改正労働契約法(有期労働)を正しく理解し活用しよう/嶋﨑量(事務所だより2012年8月発行第45号掲載)

news201208_small改正の意義

  非正規雇用労働者の不安定雇用や処遇の劣悪さが問題となっていますが,実はこのような非正規雇用労働者の多くは「有期労働契約」(労働契約に期間の定めがある契約:我が国で約1200万人)です。そして,非正規雇用労働者にとって,「有期」契約であることが,その労働条件改善にとって大きなハードルとなっていました。
 というのは,「有期」契約であるが故に,次の契約更新で使用者から不利益に取扱われることを恐れて,本来認められている権利(例えば有給休暇や残業代請求)を行使できない,セクハラ・パワハラにも泣き寝入りするしかないといった状態におかれるからです。また,「有期」契約であるというだけで,賃金や福利厚生などに不合理な差別が多くの職場でみられました。
 このような状況が放置されてきた最大の原因は,我が国の労働法で,これまで「有期労働契約」に着目した法規制が存在しなかったことです。
 そんな中,2012年8月3日,この有期労働契約に関して労働契約法が一部改正されました(以下の「改正法のポイント」参照)。この改正は,我が国で増え続ける非正規雇用労働者の雇用の安定と処遇の改善を,(不十分ではあるものの)一定限度図る内容となっています。 続きを読む

「賠償責任保険の死角」その後/大塚達生(事務所だより2008年1月発行第36号掲載)

news0801_small 2006年1月の事務所だよりで、「賠償責任保険の死角」というタイトルの報告をしました。
 そのときに、まとめとして次のようなことを書きました。

 「もしも、医療機関の民事再生手続において、医療過誤による患者側の損害賠償請求債権について、一般の再生債権と同様の免除をすることが再生計画で認可されてしまうと、現行の医師賠償責任保険の保険契約約款の下では、免除後の残額に相当する額しか保険金が支払われず、患者側はせっかく訴訟で勝訴判決を獲得していても、判決認容額どおりの賠償を受けることができなくなる可能性が高い。
 医師賠償責任保険による保険金支払額が、医療機関の倒産手続の影響を受けないということが保険契約約款に定められていれば、そのようなことにはならないのであるが、現行ではそうなっていない。
 医療機関も倒産する時代であるから、このような保険契約約款の改正は急務であるが、現状では、医療機関の民事再生手続において、医療過誤の被害を受けた患者側が、損害賠償請求債権について、一般の再生債権と同様の免除をされないように、再生手続申立代理人と裁判所に求めていく必要がある。」

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賠償責任保険の死角/大塚達生(事務所だより2006年1月発行第32号掲載)

news0601_small 1991年に提訴し、他の事務所の弁護士と共同で患者側の代理人を務めてきた医療過誤訴訟が、2005年にようやく最終的に解決した。2つの病院を被告として提訴し、第1の病院に対する損害賠償請求は認められなかったものの、第2の病院に対する損害賠償請求を認容した判決が確定した。

  訴訟は、地裁、高裁、最高裁と進んで、最高裁から高裁に差し戻され、高裁での判決後に、上告提起・上告受理申立がなされて、最高裁が上告棄却・上告受理申立不受理の決定をし、ようやく判決確定に至った。解決までに極めて長期間を要し、医療過誤訴訟が抱える問題点をいくつも感じた事件であったが、訴訟の終盤において病院が倒産して民事再生手続が開始され、医師賠償責任保険の問題点にも直面した。

 2度目の高裁判決で第2病院に対する損害賠償請求が認容されたのであるが、この病院が民事再生手続開始決定を受けたため、病院と医師賠償責任保険契約を締結している保険会社が判決認容額どおりには保険金を支払わないとの態度を表明したのである。

 再生手続開始決定のことを聞かされたとき、私たちとしては、病院が倒産して支払能力がなくなったとしても、医師賠償責任保険があるのだから判決どおりの賠償額の全額が保険によって支払われるべきであると、素朴に考えた。

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