ワークルール教育の教材を作っています/石渡豊正(事務所だより2016年9月発行第53号掲載)

news201609s  現在、ワークルール教育の教材を作成中です。
  これは、日本労働弁護団(http://roudou-bengodan.org/)内に設置されたワークルール教育推進法PTの活動の一環です。

  日本労働弁護団では、平成25年3月にワークルール教育推進法PTが設置され、ワークルール教育推進法の制定に向けた活動をしています。
  ワークルール教育推進法とは、簡単に言えば、いつでも、どこでも、誰でもが労働にまつわる法律の実践的な教育を受けられるよう、体制の整備を図る法律です。国や地方公共団体の責務を定めたり、予算措置を講じることなどが内容として予定されます。
   ワークルールPTでは、これまで意見書の発表、シンポジウムの開催など推進法制定に向けた活動を中心に行ってきました。  
  もっとも、法律制定を求める弁護士自身が、ワークルール教育の現場を知らなければ、あるべき法制度の内容を十分に把握し得ないし、推進法制定を目指す意見にも説得力がありません。
  そこで、PT所属の弁護士が、実際にワークルールの教材を作り、ワークルール教育の経験をさらに積むことを目指そうということになりました。

   私も、同PTのメンバーとして教材作りに取りかかりましたが、これは意外に難しいものです。

  弁護士が陥りやすい誤りは、難しい法律知識を一方的に解説するというものです。
  これは教育の目標をどこに置くかを意識していない結果です。
  弁護士がいくら難しい法律知識を詳細に解説したとしても、たった1回の授業を受けただけではすぐに忘れてしまいます。

  重要なことは、働く上で違法なことに直面した際に「おかしい」と感じる感覚を養成すること、そして、すぐに適切な相談先に相談することです。
  これさえ覚えていれば、難しい法律知識をいちいち覚えていなくても、トラブルに適切に対処することができます。

  このような観点から、作成する教材は実際の事例に近いストーリーを紹介し、受講生とともにトラブルの解決方法について議論を交わすことのできる内容としました。
  自分が労働トラブルの当事者となった場合を想像し、どのように動くべきかを考えてもらう機会にしてもらおうとの趣旨です。

  法律知識に触れている部分は極一部です。もちろん、法律の条文などは挙げていません。
  厳密に言えばそうとは言い切れないものでも、わかりやすさを優先しあえて言い切る表現をしていることもあります。判例などでは、「特段の事情がない限り・・・」など留保が付くことも多いですが、その部分はあえて教えません。

  弁護士は、依頼者からトラブルの一部始終を聴取し、最終的な解決の場面にも数多く立ち会います。学生や働く方々に実際のトラブル事例を紹介しつつ、適切な対処方法をお伝えしていくことも弁護士の役割かと思います。
  今後、ワークルール教育の実践を積み重ねることで、教材もブラッシュアップさせていきたいと考えております。

  現在、日本労働弁護団(ワークルール教育推進法PT)では、ワークルール教育を行う弁護士を派遣する取り組みを行っています。労働事件の経験豊富な弁護士が実際の事例を踏まえた実践的な講義内容をご提供しますので、皆様、是非ともご活用ください。