『奴隷』『工場』は、「女工哀史」で知られる細井和喜蔵(1897-1925)の小説で、作者の死後、発表されたものだ。私は、この小説を岩波文庫版(2018年10月・12月発行)で読んだ。
作者の死後、作者の十分な校正を経ないまま、1925年と1926年に世に出ているため、構成や展開の面で不十分な点があるのは否めないし、やや俗っぽいところが多いが、今だからこそ、読んで良かったと思える小説だった。
「労災」カテゴリーアーカイブ
公務員の労働時間管理/山岡遥平(事務所だより2020年1月発行第60号掲載)
先日、ある総務省官僚の過労死について、公務災害申請をしました(2019年12月23日付けで公務上認定されました。)。
この方は、税制改正に向けて省内外の要望をまとめる等の業務を行っていましたが、長時間労働等があり、自らその命を絶つことになってしまいました。
この方の事件の他、地方公務員の方の過重労働事件も担当しているが、共通して感じられる問題が、労働時間管理のあり方です。
「給特法」を考えよう/嶋﨑量(事務所だより2020年1月発行第60号掲載)
「給特法」と呼ばれる法律をご存じでしょうか。
給特法により公立学校の教員は、他の労働者とは異なり残業代が支払われません。
給特法では、給料月額の4%相当の教職調整額を支給する代わり、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないとされ、いわゆる超勤4項目(①校外実習等、②学校行事、③職員会議、④非常災害等)を除き時間外労働を命じることはできない建前になっています。にもかかわらず、現実には教員の「自発性」による業務遂行とされ、部活動指導等で恒常的に発生する時間外勤務を「労働」とすら取り扱われず、時間外労働が常態化しているのです。
労働法の意義を見つめ直す/嶋﨑量(事務所だより2019年8月発行第59号掲載)
厚生労働省の「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」(鎌田耕一座長)は、2019年6月28日に「中間整理」を発表しました。ここでは、労働基準法上の労働者性が認められない者に対する労働政策上の保護の在り方を検討しており、個人事業主であって、労働者と類似した働き方をする者を中心に、保護のあり方を検討するとされています。
古くから、運送業、エステ、保険外交員、建設作業員、集金人などは、個人事業主扱いとされる方が多く、問題となってきました。
近時は、政府の兼業・副業の推進も相まって、インターネットを通じたクラウドワーカーなども拡がっています。ニュースに目を向けても、芸能人(多くは労働者ではない働き方とされている)について、トラブル等を契機に簡単に契約が打ち切られ、その契約形態が注目されています。
過労死等防止対策推進シンポジウム/野村和造(事務所だより2019年8月発行第59号掲載)
全国過労死を考える家族の会の人たちの大変な努力の中で、超党派で過労死等防止対策推進法が成立し、2014年11月1日から施行されました。そのもとで、厚生労働省主催の過労死等防止対策推進シンポジウムが各地で毎年開かれています。
昨年11月の神奈川でのシンポジウムでは、岡田康子さんの「パワーハラスメントを防止するために」と労働安全衛生研究所の高橋正也さんの「働く人はぐっすり眠らなければならない」の講演がありましたが、九州からいらしたAさん(家族の会)の発言は、特別に心に残りました。
ご本人の承諾を得ましたので、ご紹介します。