公務員の労働時間管理/山岡遥平(事務所だより2020年1月発行第60号掲載)

 先日、ある総務省官僚の過労死について、公務災害申請をしました(2019年12月23日付けで公務上認定されました。)。
 この方は、税制改正に向けて省内外の要望をまとめる等の業務を行っていましたが、長時間労働等があり、自らその命を絶つことになってしまいました。
 この方の事件の他、地方公務員の方の過重労働事件も担当しているが、共通して感じられる問題が、労働時間管理のあり方です。

1 公務員の労働時間管理の現状

 言うまでもなく、民間労働者については、タイムカードやPCのログオン・ログオフ情報等、客観的方法での労働時間把握が義務づけられています。
 ところが、公務員の労働時間・出退勤管理は、総務省の「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査」(2017年)によれば、客観的な記録による労働時間の把握をしている自治体(都道府県、政令指定都市、県庁所在市)は25%、任命権者からの現場確認が30%、職員からの申告が44%となっています。

 国家公務員に関して、簡単に調べたところでは資料は見つかりませんでしたが、超勤命令簿への記入(要するに自己申告)でされているのが実態のようです。たとえば、平成16年ですが、長妻昭議員が、厚生労働省においてタイムカードの導入を行わないのか、と質問したところ、「厚生労働省における職員の勤務時間管理については(略)勤務時間報告書等を適切に管理することにより特段の支障なく行っているところであり、また、タイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないことから、勤務時間管理の手法としてタイムカードの導入は必要でないと考える」、また、使用者が現認する方法も認められている、との答弁を得ています。
 使用者が現認する方法、といいますが、上司が必ずしも最後まで残っているわけではないのは常識的にわかりそうなものです。
 特に中央官庁においては、各官庁の建物にフラッパーゲートが設けられていて、これによって入退館記録は容易に記録できるはずなのに、されていません。
 法令上の義務履行については少なくとも、公務員を管理する自治体、国は模範でなくてはなりません。それにもかかわらず、タイムカードの導入を厚生労働省は拒否したのです。
 省庁こそ違えども、こうした意識の中、優秀な官僚の命が過重労働によって奪われてしまいました。

2 客観的な労働時間管理へ

 公務員は、私たちの生活の基本的インフラに関わる非常に重要な業務を行っています。それにもかかわらず、適切な労働時間管理がされず、「予算の問題」などとして、超勤手当が支払われないなどあってはなりません。
 厚生労働省は、巷間には「強制労働省」などと呼ばれているようです。私の申請した労災事件を担当していた監督官の方も、事件の進捗がずいぶん遅れがちだな、と思っていたら、退職されてしまいました。

 私の両親も国家公務員でしたし、祖父も、地方公務員をしていた時期があります。労務管理の方法を聞いたところ、当然のように超勤命令簿で、正確な時間の記入などできない、しない、とのことでした。祖父はそのことで労組とケンカをしたこともあると言っていました(「山岡がタダで残業をするのは迷惑だ」と言われたそうです。正しい指摘でしょう。)。
 私が学生だった頃、両親と平日に顔を合わせるのは朝のほんの短い時間で、私が起きている間に帰ってくることは珍しかったですので、労働時間が短いわけでは決してありませんでした。

 やりがいがあるから公務員になる方が多いわけですが、きちんと労働時間を管理し、働く人の健康に気をつけない職場は相対的に魅力が下がっていきます。優秀な人材も確保できず、日本の社会的なインフラが崩壊してしまいますし、現にそうなりかけています。
 公務員の労働時間管理を客観的な方法で行う、まずはこれだけでも声を上げてすすめていけないものかなぁ、と考えています。皆様も、ぜひ、この問題に注目して頂ければと思います。