労働組合の合同/大塚達生(事務所だより2022年1月発行第63号掲載)

 私は、弁護士として、いくつかの分野の仕事に携わっていますが、これまでの労働組合側の代理人活動の経験から、県内外の複数の労働組合(産業別連合体、企業グループ労連、企業別組合、職能別組合)と顧問契約を結んでいただき、労働組合の組織運営や労使問題に関するご相談を、日常的に受けています。
 最近は、企業のM&A(合併・買収)が盛んですので、それに伴う労働組合の合同について、組合からご相談を受けることもあります。昨年は、2件の大規模な組合合同手続で、仕事をさせていただきました。
 労働組合の合同とは、2つ以上の労働組合がその存続中に1つの労働組合に統合されることです。組合合同の方式には、新設合同と吸収合同の2種類があります。新設合同は、甲組合と乙組合が合同して丙組合となることです。吸収合同は、甲組合が乙組合を吸収することです。
 組合合同による効果として、各労働組合の財産、組合員の権利義務は、そのまま合同後の組合に承継されます。そのため、合同前の各組合の組合員は、そのまま合同後の組合の組合員となりますので、改めて加入手続をとる必要はありません。
 合同前に各組合が使用者と締結していた複数の労働協約も、そのまま合同後の組合に承継されます。ただし、異なる内容の複数の労働協約をそのまま維持すると支障が生じる場合もありますので、そのような場合は、労使で労働協約の改定に取り組むことになります。

 組合合同の手順についてですが、各組合がそれぞれ大会を開き、合同について決議することが必要です。決議しなければならない事項は、

①○年○月○日に○○労働組合と合同すること
②合同の方式(新設合同か吸収合同か)
③合同のために組合間協定を締結すること
④合同後の組合の名称、規約等
⑤合同後の組合の暫定的な執行体制(新役員が選出されるまで)

などです。
 この大会決議は、各組合の規約に定められた手続により行います。組合規約の中に合同の決議に関する規定がない場合、合同は解散に準じた大きな組織変更ですので、解散決議と同じ要件に従って決議しておくのが安全です。
 なお、合同する組合の中に法人登記している組合があり、合同後にその組合の解散登記をする必要がある場合は、その組合の大会において、合同のための解散決議もしておく必要があります(通常の解散とは異なり、合同のための解散ですので、そのことが分かる決議にしておく必要があります)。

 各組合の大会で必要な決議を行った後は、その決議に基づいて、各組合が合同のための協定を締結します。
 この協定でも、合同の日にち、合同の方式、合同後の組合規約について定めておき、さらに合同に向けた各組合の会計処理、合同後の組織運営等、合同に向けて必要となる約束事を具体的に定め、この協定にしたがって、各組合が合同のための準備を整えます。
 そして、合同の日を迎え、協定にしたがって合同の事務を行い、以後は1つの労働組合として、合同後の組合規約に則って活動することになります。

 法人登記していた組合が、合同後の存続組合となる場合は、名称変更、目的及び事業の変更など、変更が発生する事項があれば、変更登記の手続を行います。
 また、法人登記していた組合で、合同後の存続組合にならなかった組合については、解散登記を行います。ただし、これは通常の解散とは異なり、あくまで合同のための解散ですので、通常の解散のような清算手続は開始せず、その組合の財産は、そのまま合同後の組合に承継されます。このあたりのことは複雑なので、弁護士、司法書士に相談する方が安全です。

 労働組合の合同については、会社の合併と異なり、労働組合法に規定が定められておらず、その手続について実務的に解説した手引書も乏しいため、組合合同が必要となったときに、組合役員は何をすればよいのか迷うことも多いのではないかと思います。この拙文がその際の一助になれば幸いです。