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  少年事件Q&A

弁護士 石渡 豊正


  少年(20歳未満)には、少年審判手続が用意されており、多くの点で成人の刑事裁判手続とは異なります。
 弁護人や付添人として活動する弁護士にも少年事件特有の役割が求められます。
 このページでご説明する事項は次のとおりです。

Q1 少年事件の手続の流れはどのようになっていますか?
Q2 少年事件において弁護士はどのような活動をするのですか?
Q3 少年鑑別所とはどのような施設ですか?
Q4 少年審判は、何歳までの人が対象となりますか? また、どんな事件を対象とするのですか?
Q5 少年審判手続も成人の刑事事件と同じように一般に公開されるのですか?誰が出席するのですか?
Q6 少年審判期日はどのような順序で進行しますか?
Q7 少年審判の結果にはどのようなものがありますか?
Q8 試験観察とは何ですか?
Q9 少年審判手続に検察官が関与するのはどのような場合ですか?
Q10 少年事件の被害者は少年審判にどのように関わることができますか?


Q1 少年事件の手続の流れはどのようになっていますか?

      少年事件の主な流れは、成人の刑事事件と同様に捜査から始まり、捜査が終わると検察官によって事件が家庭裁判所に送致され、その後に少年審判を受けるというものです。

      以下、順を追って説明します。

【捜 査】

    まずは、警察などの捜査機関による捜査が行われます。

    捜査は、在宅のまま行われることもありますし、逮捕勾留されることもあります(身柄事件)。

    身柄事件の場合、警察は、少年を逮捕してから48時間以内に検察官に送致します。

    検察官は少年を受け取った時から24時間以内に裁判官に対して、「勾留に代わる観護措置」(少年法43条1項)か、あるいは成人と同じく勾留を請求します。

    「勾留に代わる観護措置」は、少年についてのみ認められている制度で、身柄拘束場所は警察留置場ではなく少年鑑別所です。身柄拘束期間も10日間に限られ、更新は認められません(少年法44条3項)。

    少年の被疑事件においては、「やむを得ない場合」でなければ勾留をすることはできないと規定されています(少年法43条3項、少年法48条1項)が、実務においては勾留が原則化しており、原則と例外が逆転した取り扱いがなされています。

 したがって、少年であっても警察署において長期にわたって身柄拘束されることがあり、大きな肉体的・精神的負担を負う可能性があります。

【家庭裁判所送致と観護措置】

    家庭裁判所送致

    検察官は、捜査の結果、犯罪行為があったと判断するときは、これを家庭裁判所に送致します(少年法41条)。これがいわゆる「家裁送致」です。

    成人の場合は、犯罪の嫌疑があっても諸般の事情を考慮して起訴しないこと(起訴猶予)があり得ますが、少年事件の場合は検察官はすべての事件を家庭裁判所に送致しなければならない点で異なります。

    事件の送致を受けた裁判所は、非行事実の存否や少年の要保護性(非行性・矯正可能性・保護相当性)ついて調査を行います(少年法8条1項)。

 観護措置

    家庭裁判所は、家裁送致後、少年審判までの期間、観護措置を採ることができます。 

 観護措置とは、少年の心情の安定を図りながら心身の鑑別を行うこと、及び少年の身柄を保全することを目的とする措置です。

    観護措置には、少年を家庭等に置いたまま、家庭裁判所調査官が随時連絡をとって少年を確保しておく方法(少年法17条1項1号)と、少年を家庭等から引き離して少年鑑別所に収容する方法(少年法17条1項2号)の2種類がありますが、前者はほとんど利用されておらず、通常、観護措置というと後者を指します。

    少年鑑別所における収容期間は、原則として2週間ですが、特に継続の必要があるときは更新することができます(少年法17条3項)。

    さらに、犯罪少年(Q3参照)に関する死刑、懲役又は禁錮にあたる罪の事件では、一定の要件の下で最長8週間まで更新できます(少年法17条4項)。

【少年審判】

 家庭裁判所による調査が終わると、少年審判が開かれます。

 少年審判とは、家庭裁判所が、非行があるとされる少年について非行事実の有無を確定し、非行のある少年に対して、保護処分(Q7参照)若しくは教育的働きかけ又は刑事処分のいずれが適当かを選択する手続です。

    なお、家庭裁判所は、保護処分の決定は行いますが、刑事処分については、刑そのものを科すことはせず、刑事処分が必要と認めた事件は検察官に送り返し(いわゆる「逆送」)、検察官がこれを成人同様、刑事裁判所に起訴し、そこで刑事訴訟手続により刑が決せられます(Q7の【検察官送致】参照)。

    また、家庭裁判所が審判を開くまでの必要がないと判断した場合には少年審判が開かれないこともあります(少年法19条1項)。


Q2 少年事件において弁護士はどのような活動をするのですか?

 弁護士は、捜査段階においては成人の場合と同様に「弁護人」という立場で活動し、家庭裁判所送致後は「付添人」という立場で活動します。

 弁護士の活動内容はそれぞれの事案によって異なり、内容も多岐にわたりますが、身柄解放に向けた活動と適切な審判結果を求める活動が中心となります。

【身柄解放に向けた活動】

 身柄事件においては、身柄拘束からの早期解放を目指した活動を行います。
 

  逮捕から勾留に切り替わる時点では、検察官に対しては勾留請求をしないように、裁判官に対しては勾留請求を却下するように、意見書の提出や面会を行います。

 裁判所によって勾留が認められた後においても、勾留の取消を求めて準抗告を申し立てることもあります。

 さらに、家庭裁判所に送致される段階では、少年鑑別所に収容しないことを求める意見書の提出等を行います。

【適切な審判結果を求める活動】

    後記Q7のように、少年審判の結果には、様々なものがあります。弁護士は、付添人として、その少年にとって最も適切な審判結果が得られるように活動します。

    少年審判期日においては、意見書の提出や少年に対する質問などを通じて、少年にとって有利な事情や少年の反省や更生に向けた気持ちを裁判所に伝えます。

    また、就学先や職場等への働きかけも重要です。少年審判後に就学先に戻れるように学校等と協議・交渉したり、雇主の指導監督を約束する旨の上申書を作成してもらうこともあります。

    被害者がいる事件では、被害者との間の示談交渉や、被害者の不安を取り除くために必要な対処をすることも重要となります。


Q3 少年鑑別所とはどのような施設ですか?

    少年鑑別所は、家庭裁判所の求めに応じて鑑別対象となる少年の鑑別を行うこと(Q1【家庭裁判所送致と観護措置】参照)、観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される少年に対し、健全育成のための支援を含む観護処遇を行うこと(Q1【捜査】参照)などを業務とする法務省所管の施設です。

    各都道府県庁所在地など、全国で52か所(分所1か所を含む。)に設置されています。

    少年鑑別所が行う「鑑別」とは、専門的知識や技術(医学、心理学、教育学、社会学など)に基づいて、少年の非行等に影響を及ぼした資質上及び環境上の問題点を明らかにした上、その改善に寄与するための適切な指針を示すことです。

    少年鑑別所が作成した鑑別結果通知書は、家庭裁判所調査官の意見と共に裁判官に提出され、裁判官の判断資料となります。


Q4 少年審判は、何歳までの人が対象となりますか? また、どんな事件を対象とするのですか?

    少年審判の対象となるのは、審判の時に20歳未満である者です(少年法2条1項)。
    そして、少年審判は、「非行のある少年」(少年法1条)を対象とします。
    「非行のある少年」には、以下の1~3が含まれます。

  1.     罪を犯した少年(犯罪少年)
  2.     刑罰の定めのある法令に触れる行為をしたが、行為の時14歳未満であるため、刑法上罪を犯したことにならない少年(触法少年)
  3.     保護者の正当な監督に服しないとか、正当な理由がないのに家庭に寄り付かないとか、あるいはいかがわしい場所に出入りするとかいう一定の事由(虞(ぐ)犯(はん)事由)があり、その性格や環境から見て将来罪を犯すおそれ(虞(ぐ)犯(はん)性)のある少年(虞(ぐ)犯(はん)少年)

    もっとも、実際に少年審判に付されるのは、1の犯罪少年がほとんどです。


Q5 少年審判手続も成人の刑事事件と同じように一般に公開されるのですか? また、誰が出席するのですか?

【非公開の審理】

    成人の刑事裁判が公開の法廷で行われるのと異なり、少年審判は、家庭裁判所において非公開で行われます(少年法22条2項)。

【出席者】

    審判廷への出席者は以下のとおりです。

  • 裁判官(少年審判規則28条1項)
  • 裁判所書記官(少年審判規則28条1項)
  • 家庭裁判所調査官(少年審判規則28条2項)
  • 少年(少年審判規則28条3項)
  • 保護者(少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者、少年法2条2項)
  • 付添人(少年審判規則28条4項)

  必要に応じて、少年の親族、教師、雇主、保護観察官、保護司、児童福祉司、少年鑑別所・少年院の技官などが出席することもあります(少年審判規則29条)。

    また、検察官や被害者が出席することもあります(Q9、Q10参照)。


Q6 少年審判期日はどのような順序で進行しますか?

    少年審判期日における一般的な流れとしては、まず、裁判官から、人定質問、黙秘権の告知、非行事実の告知がなされ、その後、非行事実に対する少年及び付添人の認否が行われます。

    少年及び付添人が非行事実を争わない場合には、裁判官から、少年や保護者等に対する質問がなされ、その後、付添人や調査官が少年に質問をします。

    最後に、付添人と調査官が意見を述べ、裁判官から決定が言い渡されます。

    多くの場合、決定の言い渡しは、第1回審判期日の審理後ただちに行われます。

    一方、非行事実について少年が否認する場合などには、非行事実の有無を確定するために証人尋問などの証拠調べが行われ、審判期日も数回に及ぶこととなります。


Q7 少年審判の結果にはどのようなものがありますか?

 ① 保護処分、② 検察官送致、③ 不処分というものがあります。
  

【保護処分】

   保護処分には、保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致が含まれます。

 保護観察

 少年を施設に収容せずに、保護観察所の保護観察官及び民間の篤志家である保護司の指導監督下において、更生を図る処分を言います。

 児童自立支援施設

 不良行為をしたりそのおそれのある児童や家庭環境の問題などにより生活指導を要する児童を対象に、施設に入所させたり保護者の下から通わせて、必要な指導を行い、その自立を支援することを目指します。

 児童養護施設

 保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、養護と児童の自立支援を目的とした施設です。

 少年院

 生活指導、職業指導などの様々な教育活動を行うことにより、犯罪的傾向の矯正や社会生活に必要な知識・能力の習得を目指す施設です。少年の自由が拘束されるので、最も強力な保護処分と言えます。

【検察官送致】

 検察官送致とは、いったん検察官から家庭裁判所に送致された事件のうち、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪のものについて、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときに、再び検察官に送致するものです(少年法20条1項、いわゆる「逆送」)。

    そして、16歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事案については、原則として検察官送致となるとされています(少年法20条2項)。

    検察官送致となった少年は、成人と同じく公開の刑事裁判を受けることとなりますし(裁判員裁判を含みます)、有罪の判決がなされれば刑事処分に付されることになります。

    もっとも、事実審理の結果、裁判所が少年を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、再び事件を家庭裁判所に移送することがあります(少年法55条、家庭裁判所への再移送)。

【不処分】

 不処分とは、家庭裁判所が、保護処分に付することができない、又は保護処分に付する必要がないと認めるときに、いずれの保護処分にも付さない決定をすることです(少年法23条2項)。

    不処分は、非行事実が認められない場合、非行事実は認められるものの、その程度が軽く、家庭環境が整っているなどの理由から保護処分の必要がないと認められる場合、別件で既に保護処分中である場合などになされます。


Q8 試験観察とは何ですか?

 試験観察とは、家庭裁判所が、調査や審判によってもいずれの処分にするかを直ちに決めることが困難な場合に、おおむね3か月から4か月の期間、少年を家庭裁判所調査官の観察に付すことです(少年法25条)。

    試験観察においては、家庭裁判所調査官が、少年の動向を観察しながら、必要に応じて生活指導や環境の調整、職場、学校との連絡等を行います。

    そして、その間の少年の成績を考慮した上で、最終的な処分が決定されます。

    試験観察は、最終的な処分が留保されていますから、少年に強い心理的強制を加えることができ、それによって再非行防止の効果を目指すものです。

    付添人は、試験観察期間中、少年や保護者との面談等を通じて行動の自重を促したり、生活環境を整えるなど、より軽度の最終処分を目指した活動を行います。

【在宅試験観察と補導委託】

 試験観察には、在宅試験観察と補導委託の2種類があります。

    在宅試験観察は、少年を自宅に戻し、定期的に家庭裁判所調査官が面会し、少年の行動や環境調整の経過を観察するというものです。

    補導委託とは、民間の篤志家や施設に少年を預け、生活指導や職業補導などを委託することです(少年法25条2項3号)。


Q9 少年審判手続に検察官が関与するのはどのような場合ですか?

    家庭裁判所は、犯罪少年(Q4参照)に係る事件であって、死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁固に当たる事件について、検察官の審判手続への関与が非行事実の認定のために必要であると認めるときに検察官を少年審判手続に出席させます(少年法22条の2第1項)。

    この場合、検察官は、審判の手続に立ち会い、少年及び証人その他の関係人に発問したり、意見を述べることができます(少年法22条の2第3項)。


Q10 少年事件の被害者は少年審判にどのように関わることができますか?

【記録の閲覧・謄写】

 被害者は、裁判所に申し出て、裁判所が保管する記録を閲覧又は謄写することができます(少年法5条の2)。

    ただし、家庭裁判所が専ら当該少年の保護の必要性を判断するために収集したもの及び家庭裁判所調査官が家庭裁判所による当該少年の保護の必要性の判断に資するように作成し又は収集したもの(「社会記録」と呼ばれます。)は閲覧又は謄写の対象から除かれます。

 よって、閲覧又は謄写の対象は、供述調書や実況見分調書などの非行事実の有無に関する資料(「法律記録」、「事件記録」などと呼ばれます。)に限られます。

 また、閲覧又は謄写を求める理由が正当でない場合、少年の健全な育成に対する影響などを考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でない場合は、閲覧又は謄写は認められません。

    記録の閲覧や謄写をした者が、正当な理由もなく少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らすこと、閲覧又は謄写により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為は禁止されています(少年法5条の2第3項)。

【被害者の申し出による意見の聴取】

  被害者は、家庭裁判所に対し、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出をすることができ、その申出があるときは家庭裁判所が意見を聴取します(少年法9条の2第1項)。

 ただし、事件の性質又は審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の聴取は行われません(少年法9条の2第2項)。

【被害者の審判傍聴】

 家庭裁判所は、被害者から審判期日における傍聴の申出があるときは、一定の要件のもとに傍聴を許可することができます(少年法22条の4)。

    対象となる事件は、犯罪少年又は触法少年(Q4参照)のうち12歳以上の少年の事件であって、下記の罪に関するものです。

  • 故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪
  • 刑法211条(業務上過失致死傷等)の罪
  • 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第4条、5条又は6条第3項若しくは第4項の罪

    ただし、被害者を傷害した場合にあっては、その傷害により生命に重大な危険を生じさせたときに限ります。

   家庭裁判所は、被害者から傍聴の申出があっても、少年の健全な育成を妨げるおそれがあるときは傍聴を許可しません。

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