民法には相続についてルールが定められていますが、1980年(昭和55年)に改正されて以来、大きな見直しはされてきませんでした。
しかし、平成25年9月4日、最高裁が、嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1と定めていた民法の規定が憲法に違反すると判断し、これを受けて同年国会でこの規定を削除して嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にすることを内容とする民法の一部を改正する法律が成立したのをきっかけに、高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の情勢に鑑み、相続に関するルールの見直しが求められるようになりました。
その結果、2018年(平成30年)7月、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
具体的には、主に次の改正が行われており、2019年(平成31年)1月13日から段階的に施行されています。
(1) 残された配偶者の生活への配慮等の観点から、①配偶者居住権の創設、②婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置。
(2) 遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する観点から、①自筆証書遺言の方式の緩和、②法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設。
(3) その他として、①遺産分割前の預貯金の払戻し制度の創設、②遺留分制度の見直し(金銭債権化等)、③相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を無償で行った場合の金銭請求の制度(特別の寄与の制度)の創設など。
これらの改正を踏まえた相続全般については、下記の「より詳しい解説」をご覧ください。
より詳しい解説
【解説】 相続(1) 誰が何を相続するか
【解説】 相続(2) 遺言がないとき どのような基準で遺産は分けられるか
【解説】 相続(3) 遺言により遺産の分け方を定める場合
【解説】 相続(4) 相続割合の最低保障としての遺留分
【解説】 介護と寄与分
【関連】 相続法が変わりました(事務所だより2019年8月発行第59号掲載)