2014年は、久しぶりに「裁判の力」を実感できた判決が相次いだ年でした。
5月には、原発の運転差止を認めた大飯原発福井地裁判決と自衛隊機夜間飛行の差止を認めた横浜地裁判決が、10月には妊娠による簡易業務への転換を契機とする降格は均等法9条3項に違反するとしたマタハラ事件最高裁判決が、そして12月にはヘイトスピーチを断罪した1、2審判決を支持する最高裁決定が出ました。
いずれも当事者の血のにじむような闘いに、裁判所が真正面から取り組んで答えを出した判決でした。もっとも大飯原発と厚木基地の判決は一審判決であり、国策の根幹に触れる事案ですから、高裁・最高裁の判決は決して予断を許しませんが・・・。
「司法制度」カテゴリーアーカイブ
ロンドンからドイツへ/田中誠(事務所だより2005年8月発行第31号掲載)
鵜飼弁護士の文章の最後に出てくるT弁護士とは私のことですが、その後労働弁護団の一行はベルリンに向い、5月11日から14日までドイツ調査を行いました。
1997年にも、日本労働弁護団では鵜飼弁護士の紹介するイギリス調査以外に、ドイツ・フランス・イタリアに別れて労使紛争解決システムの調査を行いました。私は、その際、ドイツ班で勉強しましたが、それ以来の再訪になりました。
現在、わが国では、解雇・配転といった労働契約の諸問題を規律する労働契約法制立法の動きがありますが、厚生労働省からは「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会中間取りまとめ」というのが出ており、そこで、厚労省サイドが目玉とするのが、解雇が無効であっても判決によって雇用関係を解消できる「金銭支払による雇用関係の終了制度」と、労働条件を労働協約や就業規則で変更できない場合に解雇とセットで労働条件を変更(不利益変更)する「雇用継続型契約変更制度」です。
上記「取りまとめ」は、賛否両論併記のような形になってはいますが、厚労省サイドがこれを導入したいと考えていることは明らかで、労働法学者の一部にも導入を強く主張する人がいるとのことです。 続きを読む
ロンドン再訪記/鵜飼良昭(事務所だより2005年8月発行第31号掲載)
連休明けの5月7日から10日まで、日本労働弁護団の英国調査に参加した。目的は、ET(雇用審判所)におけるレイメンバーの研修や労働時間法制(特にオプトアウト)を調べることである。私にとっては8年ぶりのロンドンであったが、前回97年4月の英国調査は、色々な意味でエポックなものであった。
93年2月に始めた労働弁護団のホットライン活動を通じて、多くの労働者が無法なリストラの中で翻弄されている現実を知った。そして、泣き寝入りを強いられている一人ひとりの労働者の立ち上がりをサポートし、その権利を実現するための新たなルールやシステムの必要性を痛感した。労働弁護団が94年4月に公表した労働契約法制立法提言(第1次)は、その取り組みの第一弾である。提言をまとめるために、西谷先生にお願いして独の労働契約草案を送っていただいたり、葉山の合宿で熱心に議論したことが昨日のように思い起こされる。これは、個々の労働争議を勝利することが全てであった私にとって、新しい体験でありテーマとなった。 続きを読む