分譲販売されたマンションの建物に欠陥が見つかり、購入後の区分所有者全員で構成される管理組合が、欠陥の補修や損害賠償を求めて、分譲販売を行った企業や建設工事を行った企業と交渉することがあります。
交渉では解決に至らず、損害賠償請求訴訟を起こす必要がある場合、誰を原告にすればよいでしょうか。
躯体、共用廊下、階段、ベランダなどの共用部分や共有の附属施設(以下、合わせて「共用部分等」といいます。)に欠陥がある場合と、独立した個々の住戸の部分である専有部分に欠陥がある場合とでは、結論が異なります。
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共用部分等は、マンションの区分所有者全員で共有されていますので(*1)、共用部分等に欠陥がある場合、欠陥による損害賠償請求権は、区分所有者全員のそれぞれに、共有持分割合にしたがって分割して帰属します。
そのため、共用部分等に欠陥がある場合は、区分所有者のそれぞれが原告となり、自分に帰属する損害賠償請求権に基づいて訴訟を起こすことが可能です。
しかし、この方法は現実的ではありません。それまで区分所有者個々人ではなく管理組合が交渉してきたのであれば、なおさらです。それぞれの区分所有者が個々に訴訟を起こすのは煩雑ですし、もし一部の区分所有者だけしか訴訟を起こせない場合は、共用部分等の欠陥による損害の一部についてだけしか賠償を得ることができません。また、区分所有者が個々に訴訟を起こし、個々に賠償金を受け取ってしまうと、それが個人的に費消されてしまって、共用部分等の補修費用に充てることができなくなるリスクも出てきます。
そこで、共用部分等に欠陥がある場合は、区分所有者全員のそれぞれに分割して帰属している損害賠償請求権の全てについて、管理組合主導の下に訴訟を起こす方法を考える必要があります。
この点について、建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」といいます。)の47条によれば、管理組合が法人となっている場合は、管理組合法人が、規約又は集会の決議により、共用部分等の欠陥によって生じた損害賠償金の請求に関し、区分所有者のために原告となることができ、区分所有者を代理して損害賠償金を受領することができます。
法人となっていない管理組合については、区分所有法25条の管理者が選任されていれば、同法26条に基づき、管理者が、規約又は集会の決議により、共用部分等の欠陥によって生じた損害賠償金の請求に関し、区分所有者のために原告となることができ、区分所有者を代理して損害賠償金を受領することができます。
法人となっておらず管理者も選任されていない管理組合の場合は、まずは管理組合の法人化又は管理者の選任を行い、上記のように管理組合法人又は管理者が原告となって、共用部分等の欠陥に関する損害賠償請求訴訟を起こすことができます。
このように、管理組合法人又は管理者を原告とすれば、共用部分等の欠陥に関して各区分所有者に分割して帰属している損害賠償請求権の全てについて、一体的に訴訟を起こすことができます。
次に、専有部分に欠陥がある場合の損害賠償請求訴訟についてですが、この場合は、管理組合法人や管理者が区分所有者のために原告となることができるという法令上の規定がありませんので、欠陥のある専有部分を所有している区分所有者自身が、原告となる必要があります。
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マンションの建物に多岐にわたる欠陥が見つかった場合は、共用部分等の欠陥と専有部分の欠陥が混在していることがあります。その場合、管理組合としては、共用部分等の欠陥と専有部分の欠陥とに分類した上で、まずは共用部分等の欠陥について訴訟を起こすかどうかを検討するのがよいでしょう(特に、構造耐力上主要な部分の欠陥、雨水の浸入を防止する部分の欠陥、建物としての基本的な安全性を損なう欠陥がある場合)。
共用部分等の欠陥について訴訟を起こすと決めた場合、次に専有部分の欠陥についての訴訟も同時に起こすかどうか(欠陥がある専有部分の区分所有者を原告に加えるかどうか)を検討します。
専有部分の欠陥が一部の特定の住戸だけではなくほとんどの住戸に共通する場合は、管理組合の構成員全体の問題であると捉えて、区分所有者も原告に加え専有部分の欠陥についての訴訟も同時に行うことが考えられます。
ただし、このような訴訟における各種の方針の決定は、集団的・統一的に行う必要がありますし、管理組合としては、共用部分等の欠陥の問題の解決が主であることが多いですので、専有部分の欠陥についての訴訟を同時に行うとしても、それは共用部分等の欠陥についての訴訟に付随して行う訴訟であると位置づけ、全ての方針を管理組合と弁護士の協議によって決定できるよう(*2)、事前に各区分所有者から一任してもらうのがよいでしょう。
*1 一部の区分所有者だけの共用に供され、一部の区分所有者だけで共有されている一部共用部分については、説明を省略します。
*2 管理組合が規約に則り民主的に運営されていることが前提です。