離婚>解説(1)

  離婚手続の種類


    配偶者と離婚したいと思ったとき、相手も離婚に同意している場合であれば、離婚届を提出すれば離婚は成立します。これを協議離婚といいます。
    しかし、相手が離婚に同意していない場合、また、離婚することには同意していても、離婚の条件について合意できない場合は、裁判所を利用して離婚の手続をすすめることになります。裁判所を利用する離婚手続としては、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。
    ここではよく利用される協議離婚、調停離婚、裁判離婚について解説します。

1 協議離婚

 夫婦が話し合いでお互いに合意して離婚する方法です。

 お互いが離婚に合意し、離婚届を提出すれば成立するので、離婚の理由については問題になりません。

 未成年の子がいる場合には、子の親権者を定めなければ離婚届の届出はできませんが、それ以外の条件(たとえば養育費や財産分与等)については定めなくても離婚は可能です。

 しかし、離婚の条件について十分な話合いや公正証書の作成もないままに離婚してしまうと、後になってトラブルとなってしまうこともあります。

 離婚届を提出する前に、以下の事項等について、十分に話し合いを行い、合意した内容についてまとめた書面を作成しておく必要があります。養育費の支払や財産分与などの履行を確保するために、公正証書を作成することもできます。

  •  財産分与
  •  年金分割
  •  慰謝料
  •  養育費
  •  面会交流(子どもが離れて暮らしている親と、定期的・継続的に交流をすること)の回数、方法など

    協議離婚をする場合であっても、以上のような離婚する前に定めておくことが望ましい事項があります。離婚届を提出する前に弁護士に相談し、きちんと書面に残しておくことをおすすめします。

2 調停離婚

    夫婦での話し合いでは離婚に合意出来なかった場合などに、夫婦の一方が家庭裁判所に調停を申し立て、調停において夫婦双方が合意できれば、調停調書が作成され、離婚が成立します(ただし、申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚調停調書の謄本を添えて、離婚届を提出しなければなりません。)。

    裁判所を利用した手続ですが、裁判とは異なり、調停委員が第三者の立場から、双方の主張を聞いて事実関係を把握・整理し、合意へと導くもので、合意がなければ調停は成立せず、離婚もできません。

    いわば、調停委員を介した話し合いにより、離婚を成立させるものです。

    調停では、離婚をするかどうかの話合いと同時に、親権者を誰にするか、面会交流をどうするか、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割などについても話し合うことができます。

3 裁判離婚

    家庭裁判所での家事調停においても、離婚の合意が出来なかった場合に、離婚を求める方が、家庭裁判所に離婚訴訟を起こします。
    この場合は、協議離婚や調停離婚と異なり、法律で定められた以下の離婚原因(民法770条1項)がなければ離婚は認められません。

 (1) 不貞行為
 不貞行為とは、配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。いわゆる不倫などがこれにあたりえます。

 (2) 悪意の遺棄
  悪意の遺棄とは、正当な理由なく、同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。
    夫婦には同居義務・協力義務・扶助義務が法律で定められています(民法752条)ので、これに違反すると離婚原因となります。
    正当な理由は、別居した目的、別居による相手方の生活状況、生活費送金の有無、別居期間等を総合的に考慮して判断されます。

 (3) 3年以上の生死不明
 3年以上の生死不明とは、3年以上生存も死亡も確認できない状態が現在も続いていることをいいます。
 行方不明であっても、生存が分かっているときは、これには当たりません。

 (4) 回復の見込みがない強度の精神病
    回復の見込みがない強度の精神病とは、その精神障害の程度が婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務、ことに他方の配偶者の精神的生活に対する協力義務を十分に果たし得ない程度に達している場合をいいます。
   ただし、精神疾患にかかったことだけで離婚原因が認められることはありません。
 さらに、精神疾患を患った配偶者への配慮も必要ですから、離婚が認められるためには、諸般の事情を考慮し、精神疾患を患っている配偶者が、離婚後に看護・療養が受けられる目処が立っている必要があります。
   精神疾患の場合は、「回復の見込みがない強度の精神病」にあたらなくても、次の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるとされることもあります。

 (5) その他婚姻を継続し難い重大な事由
 婚姻関係が破綻し、回復の見込みがないことをいいます。
 婚姻関係が破綻しているか否かを認定する際の判断にあたっては、婚姻中の両当事者の行為や態度、子の有無及びその年齢、婚姻継続の意思、双方の年齢、健康状態、資産状況、性格など婚姻生活全体の一切の事情を考慮するとされています。
 具体例としては、暴行・虐待、重大な病気・障害がある場合、過度の宗教活動、勤労意欲の欠如、犯罪行為、配偶者の親族との不和、性生活の問題などがあります。