交通事故の被害にあった場合
交通事故の被害にあった場合、被害者には、適正かつ妥当な損害賠償を受ける権利があります。
治療費・休業損害・将来の逸失利益・慰謝料等人身の被害によるもの(人損と呼ばれます)と、壊れた車両等の物的被害(物損と呼ばれます)の双方が賠償の対象となります。
賠償額算定には基準があります
交通事故は件数が多く、裁判例の集積があるので、それらを参考に、人損・物損の双方について一定の「基準」が作られています。
公平な解決を図るためには基準の存在自体は意味のあることです。
公平・中立な第三者が作った基準として有名なものとしては「東京三弁護士会・日弁連交通事故相談センター東京支部」作成(東京地裁が協力しています)の、「損害賠償額算定基準」(赤い本)、と「公益財団法人 日弁連交通事故相談センター」作成の「交通事故損害額算定基準」(青い本)があります。
弁護士や裁判所は、これら基準を参考にした上で、事案ごとの個性を考慮します。
保険会社との示談に注意
ほとんどのドライバーは任意保険に加入していますので、被害者もほとんどの場合、加害者と直接交渉したり、最初から裁判を起こしたりするのではなく、まずは加害者の加入する任意保険の損害保険会社担当者と示談交渉をすることが多くなります。
実は、一見便利に見えるこの保険会社の担当者との示談交渉に一番の注意点があります。
一番大きな問題として、保険会社が示談交渉で被害者に提示してくる賠償額が、上記のような公平・中立な基準によるものではないということがあります。
保険会社の担当者も二言目には「基準があって云々」と言うでしょう。しかし、そこで言う「基準」とは、上記のような基準と異なり、保険会社側で作ったものです。賠償責任を負う側が勝手に作っている「基準」なるものが被害者を保護するものであるはずがありません。
例えば、私たちが扱った事件でも、後遺症12級(例 鎖骨の著しい変形、女子の外貌の醜状など)に対する慰謝料(後遺症による精神的被害などに対するものです。逸失利益等有形の損害とは別です)について、保険会社は「任意保険基準による」として、92万円の慰謝料を提示してきたにとどまりました。
この金額は、前記の「損害賠償額算定基準」(赤い本)や「交通事故損害額算定基準」(青い本)に掲載されている慰謝料額の3分の1でした。
「基準だ」などといって堂々と3分の1の金額を提示してくるのですから、驚くべきことです。
また、これとは別に、加害者が外資系保険会社の任意保険に加入していた交通事故でしたが、被害者代理人として、自賠責保険の後遺障害等級について異議申立手続をとり、併合7級から併合6級に変更させたうえ、任意保険会社との間で、当初呈示されていた示談金額を約4200万円上回る金額で示談成立に至った例もありました。被害者が任意保険会社の当初の呈示額を、もし受け入れていたら、大きな損を被るところでした。
保険会社は有名な大企業ばかりなので、その社員の言うことならと信じてしまう被害者も多いようですが、危険です。
このような保険会社の担当者と対等に交渉するためには相応の法律知識が必要です。
不幸にして被害者になってしまった場合に注意すべき点は、ここで触れたような点だけに限られるものではありません。
そのようなことをふまえると、交通事故の被害にあった場合、最終的に弁護士に交渉・訴訟を依頼するかどうかは別として、必ず一度弁護士による法律相談を受けることをお勧めします。多くの場合結果が全然違ってくると思います。
より詳しい解説
【解説】 交通事故の損害賠償額