欠陥建築被害>被害を受けたら(2)

  欠陥建築・欠陥住宅の被害を受けたら
(2020/4/1以後に締結した契約の場合)

弁護士 大塚達生


 平成29年に民法の債権編を中心とする改正法が成立し、一部の規定を除き、2020年(令和2年)4月1日から施行されています。
 2020年3月31日以前に締結した請負契約、売買契約については、改正前の民法が適用されますが、同年4月1日以後に締結した請負契約、売買契約については、改正後の民法が適用されます。
 ここでは改正後の民法が適用される2020年4月1日以後に締結した請負契約、売買契約のケースについて解説します。
 改正前の民法が適用されるケースについての解説は、こちらのページです。


Ⅰ 建物建築を注文した場合
 1 注文建築に欠陥を発見 
 2 請負人の担保責任
 3 請負人の不法行為責任
 4 設計者・工事監理者の責任

Ⅱ 建物の売買の場合
 1 購入建物に欠陥を発見
 2 売主の担保責任
 3 設計者・施工者・工事監理者の責任


Ⅰ 建物建築を注文した場合

1 注文建築に欠陥を発見

 2020年4月1日以後に工務店と建物建築請負契約を締結し、建物が完成したということで引き渡しを受け使用し始めたが、建物に欠陥があることが判ったという場合に、法的にはどのような対処方法があるでしょうか。
 なお、以下で説明することは、小規模な工務店だけではなく、規模が大きい建設会社が建物建築請負契約の当事者である場合にも、あてはまることです。

2 請負人の担保責任

    1.  建物建築請負契約は、請負人が建物建築という仕事を完成することを約し、注文者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約です(民法632条)。
       
    2.  請負人が種類または品質に関して契約の内容に適合しない状態(住宅品質確保促進法では、この契約不適合状態のことを「瑕疵」といいます。)の建物を注文者に引き渡したといえる場合、注文者は請負人に対して原則として建物の修補による履行の追完を請求することができます(民法559条、562条1項)。
       
    3.  注文者が請負人に相当の期間を定めて履行の追完をするよう催告したのに、その期間内に履行の追完がないときは、注文者は、不適合(瑕疵)の程度に応じて報酬の減額を請求することができます(民法559条、563条1項)。
       もっとも、①履行の追完が不可能な場合、②請負人が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、③請負人に催告しても履行の追完を受ける見込がないことが明らかであるときなどは、請負人に催告することなく、直ちに報酬の減額を請求することができます(民法559条、563条2項)。
       
    4.  注文者は請負人に対して、損害賠償を請求することも可能です(民法559条、564条、415条)。
       
    5.  注文者が履行の追完を受けるまでは、または注文者が履行の追完に代わる損害賠償を受けるまでは、請負人からの報酬支払い請求を拒むことが可能です(民法533条)。
       
    6.  注文者が契約を解除できる場合もあります(民法559条、564条、541条、542条)。
       
    7.  注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合(瑕疵)については、注文者は、履行追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除ができません(民法636条本文)。
       ただし、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、注文者は、履行追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除ができます(民法636条但書)。
       
    8.  履行追完請求権、報酬減額請求権、損害賠償請求権、契約解除権は、①注文者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、②注文者が権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、それぞれ時効によって消滅します(民法166条1項1号、2号)。
       
    9.  建物が新築住宅の場合は、住宅品質確保促進法により、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵については、履行追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除ができる期間が建物引渡から10年間とされ、この期間を特約によって変更する場合でも、短縮はできず20年以内の範囲での伸張だけができます(住宅品質確保促進法94条、96条)。
       
    10.  履行追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除は、注文者が不適合(瑕疵)を知った時から1年以内にそのことを請負人に通知して行うことが必要です(民法637条1項)。
       ただし、建物を引き渡した時に請負人が不適合(瑕疵)を知りまたは重大な過失によって不適合(瑕疵)を知らなかったときは、注文者は、1年以内の通知をせずとも、履行追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除を行うことができます(民法637条2項)。

3 請負人の不法行為責任

 上の2で説明した担保責任という法律構成とは別に、工務店が欠陥を生じさせたことを不法行為であるとして、損害賠償請求することも可能です(民法709条)。

 ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法724条1号)。不法行為の時から20年間行使しないときも、時効によって消滅します(民法724条2号)。

4 設計者・工事監理者の責任

 これについては、「建築士の責任」のページでご説明します。


Ⅱ 建物の売買の場合

1 購入建物に欠陥を発見

 建物建築を注文するのではなく建物を購入するという場合は、請負契約ではなく売買契約となります。2020年4月1日以後に建物の売買契約を締結し、引き渡された建物に欠陥があったという場合はどうなるでしょうか。

2 売主の担保責任

    1.  引き渡された建物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない状態(住宅品質確保促進法では、この契約不適合状態のことを「瑕疵」といいます。)にあるといえる場合、買主は売主に対して原則として建物の修補、代替建物の引渡しによる履行の追完を請求することができます(民法562条1項)。
       
    2.  買主が売主に相当の期間を定めて履行の追完をするよう催告したのに、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、不適合(瑕疵)の程度に応じて代金の減額を請求することができます(民法563条1項)。
       もっとも、①履行の追完が不可能な場合、②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、③売主に催告しても履行の追完を受ける見込がないことが明らかであるときなどは、売主に催告することなく、直ちに代金の減額を請求することができます(民法563条2項)。
       
    3.  買主は売主に対して、損害賠償を請求することも可能です(民法564条、415条)。
    4.  買主が履行の追完を受けるまでは、または買主が履行の追完に代わる損害賠償を受けるまでは、売主からの代金支払い請求を拒むことが可能です(民法533条)。
       
    5.  買主が契約を解除できる場合もあります(民法564条、541条、542条)。
       
    6.  履行追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、契約解除権は、①買主が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、②買主が権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、それぞれ時効によって消滅します(民法166条1項1号、2号)。
       
    7.  建物が新築住宅の場合は、住宅品質確保促進法により、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵については、履行追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができる期間が建物引渡から10年間とされ、この期間を特約によって変更する場合でも、短縮はできず20年以内の範囲での伸張だけができます(住宅品質確保促進法95条、96条)。
       
    8.  履行追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除は、買主が不適合(瑕疵)を知った時から1年以内にそのことを売主に通知して行うことが必要です(民法566条本文)。
       ただし、建物を引き渡した時に売主が不適合(瑕疵)を知りまたは重大な過失によって不適合(瑕疵)を知らなかったときは、買主は、1年以内の通知をせずとも、履行追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除を行うことができます(民法566条但書)。

3 設計者・施工者・工事監理者の責任

 上の2で説明した売主の担保責任という法律構成は、売買契約の売主に対する責任追及の方法です。
 これとは別に、売買契約の場合であっても、建物の建築に携わった設計者、施工者及び工事監理者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことが可能な場合があります。

 平成19年7月6日最高裁第二小法廷判決は、次のとおり判示しています。

「建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者(以下、併せて「設計・施工者等」という。)は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして、設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。」

 そして、平成23年7月21日最高裁第一小法廷判決は、この平成19年最高裁判決にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは何なのかについて、次のとおり判示しています。

「居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」

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