日本労働弁護団関東ブロックの活動/石渡豊正(事務所だより2025年8月発行第71号掲載)

 日本労働弁護団には、「関東ブロック」というものがあります。
 「関東」と名乗っていますが、関東地方に所在する東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城のほか、山梨と長野の労働弁護団も参加しております。通称、「関ブロ」と呼ばれています。
 2024年7月、私は、この関ブロの事務局長に就任しました。

 その活動内容は、外部にほとんど知られていませんが、事務所たよりを読んで頂いている皆さまにだけ、少し紹介させていただきます。

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 関ブロは、2月に春の学習会、7月に総会を、いずれも宿泊を伴って2日間にわたり開催しています。
 その他、2か月に1度、定例会を開催しております。定例会は、各地域の持ち回りで現地開催し、毎回各地域から充実した事件報告がなされ、真剣な議論がなされています。
 以上のとおり活動はしっかりしているのですが、その組織や運営に厳格さはありません。
 既に述べたとおり、「関東」と言いながら、会員は関東地方に限定されていません。役職も、会長と事務局長(私)しか決めておりませんし、規約や入団申込書もありません。会計については総会報告のみです。総会を含めた会合は、いずれも和やかな雰囲気です。
 労働弁護団本部のように団体としての具体的・対外的な活動をするというよりも、関東近辺の労働弁護団員が相互に繋がること自体に重きを置いた団体と言えそうです。先輩方のお話しを聞いても、以前から同じような性格であったようです。
 そんな一見すると「無くても困らない」と言われてしまいそうな(?)関ブロですが、私自身は、多くの存在意義があると考えています。
 1つ目は、会員の研鑽の機会となることです。総会や春の学習会では、講師を呼んで講演を企画したり、労働審判などテーマを設定してパネルディスカッションを行っています。定例会では、各地の特筆すべき事案の紹介や検討を行います。これらは、会員が1人で黙々と事件に取り組んでいるだけでは獲得できない新たな知見を吸収する絶好の機会です。
 2つ目は、地域間の情報交換です。関東近辺とは言え、各地域の実情は様々です。弁護団内部の運営方法も異なります。地裁における労働事件の審理のあり方、弁護士会と地裁(労働集中部)との協議会の設定の有無や方法、労働委員会との関わり方、労働組合との協同のあり方、マスコミ(記者)との意見交換の仕方などでも各地域で違いがあります。会員は、上記のような情報を交換し、自分の地域をより良くするために他地域の情報を活用しています。
 3つ目は、いざという時に会員が結束したり、相互に協力し合えることです。事件の管轄が他地域にある場合に、その地域の会員を紹介し、あるいは共同受任すること、ある分野に精通している他地域の会員の協力を得ることは、定期的な交流があれば容易なことです。
 4つ目は、息抜きです。弁護士業務はストレスフルです。少し遠征して旅の気分を味わい、久しぶりに会う仲間と一緒にその土地の名物を食することで、緊張と疲労で凝り固まった精神と頭脳を休めています。

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 今年は、新たな取り組みとして、新規分野や困難な問題に果敢に取り組んでいる若手(概ね弁護士登録10年目まで)を表彰する「関ブロ賞」を創設し、更なる発展を目指しています。
 私も、新人の頃より関ブロに参加し、様々な経験と交流をとおして成長する機会をいただきました。これからの若手の先生方にも、このような貴重な場を引き継いでいきたいとの気持ちで、日々活動に取り組んでいます。