昨年夏の「事務所たより」で「ワークルール教育の教材を作っています。」との表題で、私のワークルール教育に関する取組みを紹介したところ、それを読んでいただいた某女子大学の先生からワークルール教育の講師依頼がありました。
インターネットがこれだけ普及した時代に、紙媒体の「事務所たより」がどれだけ読まれているのか多少懐疑的となっていた私でしたが、今回このようなご依頼をいただき、「事務所たより」にしっかりと目を通してくださる方々がおられることを認識しました。「事務所たより」の価値も見直さねばならないかと考えております。
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さて、肝心のワークルール教育実践の結果ですが、まだまだ改善の余地があり、大成功とは言えない状況です。学生のみなさんの関心を惹きつけるという点で、課題が残りました。
授業の内容は、私が実際に弁護士業務で担当した内定取消しの事案に多少手を加えたストーリーを紹介しつつ、相談先の選択や解決方法などについて学生と議論を進めていくというものにしました。これは、昨年夏の「事務所たより」で書いたように、「重要なことは、働く上で違法なことに直面した際に『おかしい』と感じる感覚を養成すること、そして、すぐに適切な相談先に相談すること」であって、そのために「教材は実際の事例に近いストーリーを紹介し、受講生とともにトラブルの解決方法について議論を交わすことのできる内容とし」たいと考えたからでした。
内定取消しという大学生に身近な実例を取り上げれば、学生の関心を引きつけることができるだろうとの考えでしたが、どうやら少し考えが甘かったようです。今、自分で授業内容の紹介をしてみても、やや真面目すぎたかなという印象です。これまで社会人を対象とした講演では、小難しい話も真剣に聴いていただいていたので、少し油断したようです。
聞いている人の耳に入らなければどんなに意味のある話をしても意味がないのですから、次回はこの点の改善に一番気を遣っていきたいと考えています。
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最近、厚生労働省が「『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」というものを作成して、ホームページ上で紹介しています。国もワークルール教育に本格的に取り組み始めたという点では評価されるべきことです。
しかし、その「第5章 学校・教員と外部人材との協働について」では、全国の社会保険労務士会と司法書士会の連絡先が紹介されているにもかかわらず、弁護士に関する記述が一切無いというショッキングな状況となっています。
労働トラブルの予防・解決のために何が重要かは、実際に労働事件の解決に携わる弁護士が最も良く分かっているはずです。
弁護士がワークルール教育の担い手として広く社会に認識されるよう、私自身もさらなる挑戦をしていきたいと思います。