育児・介護休業法について/大塚達生(事務所だより2026年1月発行第72号掲載)

 令和6年5月に育児・介護休業法が改正され、令和7年4月1日からと同年10月1日からの2段階に分けて施行されました。
 厚生労働省作成のQ&Aによれば、改正の内容は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、次のような措置を講じるというものです。

① 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付け
② 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
③ 育児のためのテレワーク等の導入の努力義務化
④ 子の看護休暇の取得事由及び対象となる子の範囲の拡大等
⑤ 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け
⑥ 育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業に拡大
⑦ 介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置の義務付け
⑧ 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け

 しかし、育児・介護休業法はこれまで頻繁に改正されてきた法律ですので、直近の小規模な改正についてだけ情報を得ても、法律の全体像がつかめません。
 もともと、この法律は、平成3年に「育児休業等に関する法律」(略称:育児休業法)として制定され、育児休業制度について定めていましたが、平成7年に改正されて「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(略称:育児・介護休業法)となり、介護休業制度が加わりました。そして、その後も改正されて次々と制度が付け加わり、現在に至っています(個々の条文の条名が枝番号になっているものが多いことから、この法律の改正の多さがうかがえます。)。
 この法律の全体像を把握するためには、この法律の目次を見るとよいです。目次は次のとおりです。

第一章 総則
第二章 育児休業
第三章 介護休業
第四章 子の看護等休暇
第五章 介護休暇
第六章 所定外労働の制限
第七章 時間外労働の制限
第八章 深夜業の制限
第九章 事業主が講ずべき措置等
第十章 対象労働者等に対する国
   等による援助
第十一章 紛争の解決
 第一節 紛争の解決の援助等
 第二節 調停
第十二章 雑則
第十三章 罰則
附則

 第一章(総則)の中で、この法律の目的、用語の定義、基本的理念、関係者の責務が定められています。そのうちの目的は、次のとおり第一条に定められています。

第一条 この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護等休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。

 この文は、「この法律は、・・・(A)・・・により、・・・(B)・・・ことを目的とする。」という構造になっています。Aの部分には目的を実現するための手段である制度が書かれており、Bの部分には目的が書かれています。制度の対象者は「子の養育又は家族の介護を行う労働者等」です。
 Bの部分に書かれている目的は、「・・・・・・を図り、もって・・・・・・に寄与することを通じて、・・・・・・を図り、あわせて・・・・に資することを目的とする。」と段階的な書き方になっています。順に並べると、

①子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進
②これらの者の職業生活と家庭生活との両立
③これらの者の福祉の増進
④経済及び社会の発展

となります。
 Aの部分に書かれている制度は、具体的には、

①育児休業及び介護休業に関する制度
②子の看護等休暇及び介護休暇に関する制度
③子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置
④子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置

です。つまり、次の4種類であり、それぞれカッコ内の章に定められています。

①休業に関する制度(第二章、第三章)
②休暇に関する制度(第四章、第五章)
③所定労働時間等に関する措置(第六章~第九章)
④支援措置(第十章)

 これらの制度を実施することは、事業者にも職場の同僚労働者にも負担がかかることです。しかし、第三条(基本的理念)や第四条(関係者の責務)もあわせて読むと、そのような負担がかかるとしても、少子高齢化、労働人口減少という社会情勢に対応していくためには、これらの制度を実施していかなければならないという国の並々ならぬ決意が、この法律には含まれているように感じます。Bの部分(目的)の最後に書かれている「経済及び社会の発展」は、そのような意味であると理解することができます。