月別アーカイブ: 2015年10月

第90回帝国議会会議録と日本国憲法/田中誠(事務所だより2015年9月発行第51号掲載)

news201509S 最近ありとあらゆる情報がネットで入手できるようになっている。
 むろんネット情報には真偽の保証がなく、レベルもいろいろだが、発信元の性質等を注意したり、複数のソースから照らし合わせたりしていけば、かなりの精度の情報が得られる。

 日本国憲法制定過程の国会論議なども、ネットで国立国会図書館の「帝国議会会議録検索システム」などを用いれば、実際に図書館に行かなくてもつかめる。
 日本国憲法(以下「現行憲法」)が、「押しつけられた憲法」というのが、復古的改憲論者ないし最近はやりの「解釈改憲論者」の発想の根底にあると見られるが、ネットで会議録を淡々と読んでいくだけでも「押しつけられた憲法」との見方が無理筋なことがわかる。 続きを読む

航空機騒音訴訟における将来の損害賠償請求/石渡豊正(事務所だより2015年9月発行第51号掲載)

news201509S 先日(平成27年7月30日)控訴審判決が言い渡された第4次厚木基地騒音訴訟では、将来の損害賠償請求が認められるか否かという点が一つの大きな争点となっています。
  民事訴訟法135条は「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。」と規定しており、これが将来の給付の訴えの根拠規定となっています。
  金銭等の給付(引渡・明渡等)を求める給付の訴えには、現在の給付の訴えと将来の給付の訴えがあります。
  現在の給付の訴えとは、口頭弁論終結の時点において履行を求めることができる状態にある請求権について認容判決を求めるものです。
  それに対し、将来の給付の訴えとは、口頭弁論終結の時点においては未だ履行を求めることができる状態にまでは至っていない給付請求権について予め認容判決を求めるもので、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り」認められます。 続きを読む

厚木基地騒音訴訟高裁判決勝訴/福田護(事務所だより2015年9月発行第51号掲載)

news201509S 30年以上弁護士をしていても、法廷で判決を聞くときの不安定な緊張感というのは変わらない。ましてや、弁護士1年目からかかわり続けてきた事件である。その過程では、第1次訴訟の原告側の請求を、差止めも損害賠償もことごとく棄却した1986年4月9日の東京高裁判決もあった。「もしや」という思いが、いやおうなく脳裏をよぎる。

 去る7月30日午前10時、東京高裁は、第4次厚木基地騒音訴訟について、自衛隊機の夜間の飛行差止めを命じた去年5月の横浜地裁判決を維持し、損害賠償については地裁判決と同水準の月額を、過去分だけでなく将来にわたって支払うよう、国に対して命じた。ただし、差止めも将来の賠償も2016年12月末までという期限を区切った。そして、米軍機の差止め請求については、地裁判決同様否定した。 続きを読む