契約社員やパートであっても有休があることを知っていたのは、正社員で66.2%、非正社員で51.9%。また、非正社員でも時間外割増賃金を請求できることについては、正社員の約3割、非正社員の約4割が知らない。さらに、二人以上で労働組合を作れることを知っていたのは、正社員で27.2%、非正社員14.8%であった。
これは、公益財団法人連合総合生活開発研究所による第24回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」(平成24年12月発表)の結果です。
このアンケート結果から分かるのは、多くの人々が、ワークルールに関する十分な知識のないまま働いているという実態です。
現在の日本において、ワークルール教育を受ける機会が不足していることが懸念されます。
労働者にとって、ワークルール教育は、法律によって認められた自己の権利を知り、それを守るために必須の前提と言えます。従って、労働者にとってワークルール教育が重要であることは論を俟ちません。
また、ワークルールが遵守された社会を実現するためには、労働契約のもう一方の当事者である使用者がワークルールに関する必要な知識と理解を有していることも同じように重要です。労働法を知らないまま人を雇えば、後々にトラブルが発生するのは当然のことです。
従って、ワークルール教育の対象としては、労働者及び使用者の双方を念頭に置く必要があると言えます。
その点からすると、学生に対するワークルール教育は有効性が高いと言えます。なぜなら、学生の中には、将来労働者となる者ばかりでなく、使用者となる者も含まれているからです。
ところが、不景気等による就職困難が続く現在においては、学生に対するキャリア教育が偏重され、労働者として有する権利、義務に関する教育は中心的な位置を占めていません。
文部科学省の「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」(平成16年1月)は、「キャリア教育」について、「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」と定義した上で、キャリア教育の基本方向として、「働くことへの関心・意欲の高揚と学習意欲の向上」、「職業人としての資質・能力を高める指導の充実」、「自立意識の涵養と豊かな人間性の育成」等を挙げています。これまでの学校教育において、キャリア教育に力点が置かれてきたことが窺えます。
一方、社会人に対するワークルール教育においては、労働組合の組織率の低下が、ワークルール教育を受ける機会を減少させる一つの要因となっています。組合員でない者は、自発的にワークルールを学習する機会を設けなければ、ワークルールを学習する機会は得られません。
非正規労働という不安定な雇用形態が増加し、また、最近では解雇規制緩和の動きがあるなど、労働者が置かれている状況は厳しさを増す一方で、多くの人々にとって労働問題は対岸の火事とは言えない状況です。
厚生労働省も、平成21年2月に「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方」を発表し、ワークルール教育の充実の必要性を指摘しています。
私も、日本労働弁護団のワークルール教育推進法プロジェクトチームに参加し、ワークルール教育推進法制定を目的とする活動をしています。ワークルール教育が充実した社会の実現を目指して、今後も引き続き、取り組みを進めていきたいと思います。