カスハラ対策は重要です!/嶋﨑量(事務所だより2026年1月発行第72号掲載)

1 動き出したカスタマーハラスメント(カスハラ)対策

 職場を問わず、ここ数年、社会問題化するカスハラ被害のご相談が増加しています。2025年は、そんなカスハラ対策の法施策が大きく動いた1年でした。
 実はこれまでも、不十分ながら、既にカスハラ対策は法令上の根拠がありました。労働施策総合推進法をうけた「ハラスメント指針」(令和2年厚生労働省告示5号)で、雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組みに、事業主によるカスハラ対策が定められていたのです。

 2025年6月には、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスハラに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化した労働施策総合推進法の改正がなされました。同時に、先進的な自治体では条例の制定や施行も進んでいます(東京都・北海道・群馬県は2025年4月1日施行)。
 なお、この法令は、公務員も保護対象で、たとえば、教員であれば保護者対応も射程内です。

2 何がカスハラ?

 法律で、①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境を害すること、の全てを満たすものとされました。
 具体的には、暴力行為、暴言・侮辱・誹謗中傷、威嚇・威迫、人格否定・差別的発言、土下座強要、長時間の拘束、社会通念上相当な範囲を超える対応の強要、合理性を欠く不当・過剰な要求などが挙げられます。

3 カスハラの与える影響

 カスハラが与える影響に、直接悪質なクレーム等に晒される従業員の被害があります。パフォーマンス低下だけでなく、精神疾患の発症など重大な健康被害が生じることもあります(令和5年9月から精神障害の労災認定基準で考慮される具体的な出来事に、カスハラが追加されています。)。
 また、クレーム対応による現場の疲弊・業務の支障(本来対応すべき業務が行えず業務が停滞)など、企業等も悪影響をうけ他の顧客にも悪影響です(*1)。

4 とるべき対策

 カスハラ対策としては、予防措置(顧客対応の考え方について教育・研修、相談体制整備、職場ルールの設定と徹底)だけでなく、発生時の対応・発生後の対応も重要です。
 筆者が考える対策のポイントを指摘するなら、個人で対応させず組織で対応する、カスハラかどうかの現場での判定や対応の手順を定めたマニュアルの策定、事案によって外部の専門家(警察・カウンセラー・弁護士)が介入するシステムを作る、労働者の技能の未熟さとして片付けない、等が挙げられます。
 発生時の対応として有用な対策の例はこちらの2頁です(*2)。
 
5 各職場・労働組合での取り組みの重要性

 カスハラ対策は、最終的には職場の特殊性が影響し、画一的な規律には限界があります。公務の特殊性、消費者保護や障がい者への配慮の視点が求められる場合もあります。職場実態を誰よりも把握する労働組合で、使用者と協議し積極的に取り組みを進めるとよいでしょう。

*1 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省委託事業、同作成事業検討委員会作成)13頁
*2 「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル概要版」(東京都)2頁