タグ別アーカイブ: 医療

医療の不確実性について思うこと/大塚達生(事務所だより2014年8月発行第49号掲載)

news201408_small 「医療の不確実性」という言葉をご存じでしょうか。
 この言葉を見たり聞いたりした方は、多いのではないでしょうか。
 この言葉を使う人によって意味に多少の違いがあるようですが、最大公約数的な意味としては、「医療に100%確実な診断、治療、経過予測はない。」「医療は100%の結果を保証するものではない。」といったことでしょうか。
 常識的に理解できることであり、もっともなことです。
 しかし、この言葉が濫用されていると感じることもあります。例えば、行われた医療行為が適切だったか不適切だったかを論じなければいけない場面で、この言葉が持ち出されているときです。 続きを読む

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レトロスペクティブとプロスペクティブ /大塚達生(事務所だより2013年8月発行第47号掲載)

news201308_small レトロスペクティブとプロスペクティブという言葉をご存じでしょうか。
 レトロスペクティブの原語であるretrospectiveには「回想的」とか「回顧的」という意味があり、プロスペクティブの原語であるprospectiveには「将来の」とか「予想される」という意味があります。
 そのことから、レトロスペクティブのことを後方視的と、プロスペクティブのことを前方視的と言い表して使っている場合があります。
 「後方視的」も「前方視的」も聞き慣れない言葉だと思いますが、医療訴訟について論じている文章、特に医療訴訟を批判する文章の中で時々見かけます。
 そこでは、医療現場における医師の思考は前方視的で、医師は現時点で得られた患者に関する情報をもとに、診断と治療方法の選択を行っているということが強調され、悪い結果が生じた場合に、司法がその悪い結果という情報(診断時、治療時にはなかった情報)をもとに、後方視的に過去の医療行為の是非を審査することに対する不満が述べられます。 続きを読む

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「賠償責任保険の死角」その後/大塚達生(事務所だより2008年1月発行第36号掲載)

news0801_small 2006年1月の事務所だよりで、「賠償責任保険の死角」というタイトルの報告をしました。
 そのときに、まとめとして次のようなことを書きました。

 「もしも、医療機関の民事再生手続において、医療過誤による患者側の損害賠償請求債権について、一般の再生債権と同様の免除をすることが再生計画で認可されてしまうと、現行の医師賠償責任保険の保険契約約款の下では、免除後の残額に相当する額しか保険金が支払われず、患者側はせっかく訴訟で勝訴判決を獲得していても、判決認容額どおりの賠償を受けることができなくなる可能性が高い。
 医師賠償責任保険による保険金支払額が、医療機関の倒産手続の影響を受けないということが保険契約約款に定められていれば、そのようなことにはならないのであるが、現行ではそうなっていない。
 医療機関も倒産する時代であるから、このような保険契約約款の改正は急務であるが、現状では、医療機関の民事再生手続において、医療過誤の被害を受けた患者側が、損害賠償請求債権について、一般の再生債権と同様の免除をされないように、再生手続申立代理人と裁判所に求めていく必要がある。」

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賠償責任保険の死角/大塚達生(事務所だより2006年1月発行第32号掲載)

news0601_small 1991年に提訴し、他の事務所の弁護士と共同で患者側の代理人を務めてきた医療過誤訴訟が、2005年にようやく最終的に解決した。2つの病院を被告として提訴し、第1の病院に対する損害賠償請求は認められなかったものの、第2の病院に対する損害賠償請求を認容した判決が確定した。

  訴訟は、地裁、高裁、最高裁と進んで、最高裁から高裁に差し戻され、高裁での判決後に、上告提起・上告受理申立がなされて、最高裁が上告棄却・上告受理申立不受理の決定をし、ようやく判決確定に至った。解決までに極めて長期間を要し、医療過誤訴訟が抱える問題点をいくつも感じた事件であったが、訴訟の終盤において病院が倒産して民事再生手続が開始され、医師賠償責任保険の問題点にも直面した。

 2度目の高裁判決で第2病院に対する損害賠償請求が認容されたのであるが、この病院が民事再生手続開始決定を受けたため、病院と医師賠償責任保険契約を締結している保険会社が判決認容額どおりには保険金を支払わないとの態度を表明したのである。

 再生手続開始決定のことを聞かされたとき、私たちとしては、病院が倒産して支払能力がなくなったとしても、医師賠償責任保険があるのだから判決どおりの賠償額の全額が保険によって支払われるべきであると、素朴に考えた。

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