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  商品先物取引の仕組み(概要)

弁護士大塚達生


商品先物取引とは

 商品先物取引とは、将来の一定時点における商品及び対価の授受を約する売買取引であって、売買の目的物となっている商品の転売又は買戻しを行ったときは、差金の授受によって決済することができるという取引です。

 商品先物取引は、商社等が価格変動リスクをヘッジするための取引として利用され、市場が発展してきたものですが、商品現物の受け渡しをせずに差金決済が行われることから、商品現物を必要としない一般の人でも取引を行うことが可能です。そのため、先物取引業者は一般の人に対して投資目的での取引を勧誘しています。

 しかし、別のページで述べるように、商品先物取引は、一般の人にとっては極めて危険な投機的取引です。

商品取引所

 商品先物取引は、商品取引所(現在は東京商品取引所、大阪取引所、堂島取引所の3つ)で行われます。

 一般の人が商品先物取引に参加する場合は、商品先物取引業を行うことについて主務大臣の許可を受けた商品先物取引業者に、売買取引を委託する制度となっています。

取引の方法

 取引が成立した売買契約のうち未決済のものを「建玉」(たてぎょく)といい、売り契約のものは「売建玉」、買い契約のものは「買建玉」といいます。

 決済の方法は、買建玉については転売、売建玉については買い戻しですが、これらを「仕切り」(しきり)とか「手仕舞い」(てじまい)といいます。

 決済しなければならない期限の月は「限月」(げんげつ)といいます(一部の商品については、限月を設けない取引(限日取引といいます)もあります。)。

 これをまとめると、買いまたは売りの建玉を行い、その後(限月がある場合は限月までに)、反対売買(買建玉については転売、売建玉については買い戻し)によって、仕切りを行うということになります。

 仕切りにあたっては、建玉時点の商品価格と仕切り時点の商品価格との差額を清算しますが(差金決済)、それにより利益か損のどちらかが発生します。

 また、商品取引員に対し、取引量に応じて、委託手数料を支払います。委託手数料は、仕切りにより利益が出たか損失が出たかにかかわらず、発生します。

取引単位と呼値

 商品取引所における取引の単位は「枚」で、商品毎に1枚あたりの数量が決められています。

 ただし、商品取引所の立会で決められる価格は、1枚あたりの価格ではなく、それよりも小さい単位の数量に対する価格です。

 売買に際し値決めの対象となる数量が商品毎に単位化されており、これを「呼値」(よびね)といいます。貴金属の先物に例をとると、1gいくらと値段をつける場合、この1gが「呼値」です。

 このように、呼値も取引単位(枚)も商品の量を表す概念ですが、両者の量は大きく異なります。例えば、金では、呼値は1gですので、これを単位として値決めが行われますが、取引単位としての1枚は呼値の1000倍にあたる1㎏です。従って、金の呼値につき1円の値動きがあれば、取引単位ではその1000倍にあたる1000円の値動きがあったことになります。

商品先物取引勘定元帳

 

 証拠金

 顧客が商品先物取引業者に委託して商品先物取引を行うには、取引の担保として、取引証拠金を商品取引清算機関(株式会社日本証券クリアリング機構)に預託しなければなりません(商品先物取引法179条1項)。

 現在、商品取引清算機関では、証拠金取引の分野で国際標準となっているSPAN(米国のシカゴマーカンタイル取引所(CME)が開発したリスク対応の証拠金計算を行うためのシステム。)に準拠する証拠金制度の運用が行われています。

 このSPAN証拠金制度では、商品取引清算機関が定める計算変数(SPANパラメーター)等を使用し、投資家(委託者)が保有するポジションを商品先物取引業者のSPAN計算システムに入力して、投資家(委託者)毎に最低限必要な証拠金額を算出します。

 商品先物取引業者は、SPANにより算出された最低限必要な証拠金額以上の範囲で、それぞれのルールに基づき預託を必要とする額を「委託者証拠金」として定めます。
 具体的な「委託者証拠金」の額は、商品先物取引業者によって異なります。

 商品取引清算機関(株式会社日本証券クリアリング機構)への取引証拠金の預託は、商品取引員が顧客から差し入れられた金銭等をそのまま清算機関に預託するのが原則ですが、例外的な方法も認められており、顧客から書面による同意を得た上で、商品先物取引業者が顧客から金銭等の預託を受け、商品先物取引業者がそれに相当する以上の金銭等に差し換えて清算機関に預託するという方法(差換預託という)もあります(商品先物取引法179条2項)。
 後者の場合、顧客から商品先物取引業者への預託と、商品先物取引業者から清算機関への預託との二段階になりますが、このうち第一段階の部分(顧客から商品先物取引業者に預託する金銭等)を「委託証拠金」と呼んでいます。

ロスカット制度及び損失限定取引

 損失が一定の限度に達した場合、予め定められた方法により仕切注文(手仕舞いのための注文)が自動的に執行されるロスカット制度を用意している商品先物取引業者もあります。
 ただし、これは損失の上限を保証するものではありませんし、市場の状況によってはロスカット水準に達しても決済注文が成立しないことがあり、預託している証拠金の額を上回る損失が発生することがあります。
  そこで、初期の投資金額以上の損失が発生しない仕組みの損失限定取引(通称「スマートCX」)を用意している商品先物取引業者もあります。


  他の解説

【解説】 商品先物取引により損害を被った方へ-損害回復に向けての考え方-
【事例】 商品先物取引による損害の回復事例(1)
【事例】 商品先物取引による損害の回復事例(2)
【事例】 商品先物取引による損害の回復事例(3)


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