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  商品先物取引による損害の回復事例(3)

弁護士大塚達生


    2014年に相談を受けたA社の事例です。

 A社は、代表者が一人で経営する会社(実質的には個人事業)で、代表者が高齢で健康も悪化していた(身体障害をもっていた)ことから、当時殆ど事業はしておらず、売上高はほぼゼロという状況でした。それまで、A社も代表者も、商品先物取引を行ったことはありませんでした。

 しかし、A社は、ある日突然、B社の外務員から電話を受け、その後、B社の外務員が訪れて、その外務員から商品先物取引を行うことを勧誘され、A社は、2013年から2014年にかけて6か月間、外務員から言われるままに商品先物取引を行い、約900万円の損害を被りました。

 このケースでは、A社が商品先物取引の未経験者であったにもかかわらず、B社の外務員から勧誘されて、取引を開始した初日に、いきなり合算の取引金額が9000万円超となる新規建玉をさせられ、その翌日には、さらに合算の取引額が3700万円超となる新規建玉をさせられ、取引開始からわずか2日間で取引額が合計約1億2800万円という新規建玉をさせられました。

 A社は、取引開始日から10日も経たないうちに大量の建玉を保有させられ(大量の建玉を保有すれば、証拠金の余裕は小さくなり、わずかな値動きでも多額の値洗損金が発生して証拠金不足に陥る危険性が高まります。)、その間に何度も証拠金不足に陥り、次々と、証拠金を追加預託させられました。

  本来であれば、ゆっくりと取引を始めさせ、習熟するのを待つというのが、取引未経験者に配慮したや方ですが、勧誘を行ったB社の外務員は、そのような配慮を全くしていませんでした。

  また、A社が行った商品先物取引の客観的データからは、次のことが分かりました。

(1) 売買回転率が高く頻回な取引(月平均51回(0.587日に1回))。
(2) 値洗損の常態化。
(3) 特定売買比率が高い(54.97%)。
(4) 複数の特定売買に重複該当する取引が多い。
(5) 両建が非常に多く(新規建玉の57.8%)、両建規制に関する法令違反も認められる。
(6) 手数料損金比率が高い(50.48%)。
(7) A社が被る損失がどんどん増大する一方でB社は高額な手数料を得ている。

 このように、顧客であるA社にとっては経済的合理性を欠く取引経過でありながら、商品先物取引業者であるB社にとっては利益になっているという客観的特徴が、顕著に認められました。

  このケースでは、こちらからB社に対して、不法行為に基づく損害賠償を求める訴訟を提起し、裁判所で審理した結果、裁判所が双方に和解を打診し、A社の損害額の7割をB社がA社に支払うことを内容とする和解が成立しました。

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