遺言・相続>相続(1)

  誰が何を相続するか

弁護士 野村和造  弁護士 大塚達生


1 何が相続されるか

 人の死亡により相続が開始します。
 死亡した人(被相続人といいます)の財産(お墓等は含まれません)は当然に相続人に引き継がれます。(注1)
 相続したくない場合は相続を放棄することができます。
 相続される財産には資産だけでなく借金などの債務も含まれます。
 被相続人の財産上の法的地位が(一身専属的なものを除き)、すべて引き継がれることになります(ただし身元保証などは引き継がれないのが原則です)。
 被相続人の状態について注意を払わず、漫然と財産がないからほうっておけばよいなどと考えることはまちがいのもとです。

2 誰が相続するか

 triangle0112配偶者

 被相続人の配偶者(妻または夫)は、常に相続人になります。
 下記の血族相続人がいる場合はそれと同順位で、いない場合は単独で、相続人になります。
 なお、ここでいう配偶者とは、婚姻届が提出されている夫婦の一方のことであり、内縁関係は含まれません(注2)

 triangle0112血 族

 血族(血のつながった親族)については次のとおり相続順位が定められています。
  第1順位 子
  第2順位 直系尊属(父母、祖父母等)
  第3順位 兄弟姉妹

 第2順位が相続するのは、第1順位による相続が行われないときです。
 第2順位の中では、被相続人に親等(しんとう)が近い方を優先します(注3)。父母がいれば、祖父母は相続しません。祖父母が相続するのは、父母がいない場合です。
 第3順位が相続するのは、第1順位の相続も第2順位の相続も行われないときです。
 なお、第1順位による相続には、下で説明する代襲相続・再代襲相続も含まれます。
 また、第3順位による相続には、下で説明する代襲相続も含まれます。

 子には、実子だけでなく、養子も含まれます。実子も養子も、同じ第1順位で、法定相続分は同じです。
 実子の中に嫡出子と非嫡出子(婚姻関係のない男女間の子)の両方がいる場合でも、嫡出子と非嫡出子は同じ第1順位で、法定相続分は同じになります。
 非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2と定めた民法の規定は、平成25年9月4日、最高裁大法廷によって、「遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していた」と判断されて、その効力を否定され、その後、平成25年11月の民法の一部改正によって削除されました(詳しくは相続(2)のページを参照)。

 直系尊属が相続人となる場合には親等の近い者が優先します。養父母は実の親と同じ扱いで区別はありません。

 兄弟姉妹についても養子は区別されませんが、父母の一方のみを共通にする兄弟姉妹は被相続人と両親を同じくする兄弟姉妹の2分の1の法定相続分となります。

 triangle0112胎児の場合

 相続人となれるのは相続開始の時に生存するもののみです。
 ただし、胎児は相続については生まれたものとみなされます(死産すれば相続人でなかったことになります)。

 triangle0112同時死亡の場合

 同時に死亡した者同士は、お互いに相続人にはなりません。

3 相続人となれない場合

 triangle0112相続欠格

 被相続人を殺害し、または殺害しようとして懲役等の刑に処せられた者、被相続人が他の者によって殺害されたことを知りながら告訴・告発をしなかった者、被相続人の遺言について詐欺または強迫により遺言をさせたり、妨げたりした者、遺言書を偽造・変造したり破棄・隠匿したりした者は相続人となれません。

 triangle0112相続人の廃除

 推定相続人のうち被相続人に対して虐待をしたり重大な侮辱を加えた者、または著しい非行があった者につき被相続人の請求により家庭裁判所が相続権を失わせることができます。これを廃除といいます。

 兄弟姉妹については遺留分を有しないので遺言で相続させないことで足り、従って廃除の対象になりません。

 廃除をするには被相続人が申立てるか、廃除手続をすることを遺言しておかなければならないので、相手方の不貞で離婚を請求しているときなど相手に相続させないためにはそれなりの手続を必要とします。
 本人(被相続人)が何もしないまま死亡してしまえばどうしようもありません。

4 代襲相続

 被相続人の子に、下記の事由が生じたときは、その人の子(被相続人の孫)が、相続人となります。孫が子を代襲して相続する(代襲相続)といいます。
 (1) 被相続人より早く死亡したとき
 (2) 欠格事由により相続権を失ったとき
 (3) 廃除により相続権を失ったとき 

 孫も死亡していれば、さらにその子(被相続人のひ孫)が相続し、これを再代襲相続といいます。

 兄弟姉妹が相続人となるときにも代襲相続がありますが、この場合は子どまりで、再代襲相続はありません。

5 相続放棄、限定承認

 金銭債務(借金など)については放棄しない限り相続開始と共に当然分割され法定相続分に応じて引き継ぐものとされています。
 遺産分割にあたって財産をもらわなかったということで、当然に債務を免れられるものではありません。
 このことを考えて相続を放棄するかどうかを決めなければなりません。
 相続の放棄は一般的には、相続の開始を知ったときから3カ月以内に家庭裁判所に手続きをとることになっています。事情があれば家庭裁判所の審判で延長できます。
 相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます。そのため、その子が代襲相続をすることもありません。
    
 限定承認は、相続によって得た財産の限度で、被相続人の負債を弁済するとの留保付きで、相続の承認をするというものです。
 限定承認る場合、家庭裁判所に対して、相続の開始を知ってから3ヵ月以内に手続きをとらなければなりません。
 相続人が複数である共同相続の場合、限定承認をするには、共同相続人全員で手続を行わねばなりません。
 限定承認をした後は公告及び催告、配当等の手続をする必要があります。

 放棄や限定承認の手続をとらなければ、当然に相続を承認したものとして扱われます。

6 相続人がいないとき

 相続人がいないとき最終的には残余の財産は国庫に帰属します。
 この場合、家庭裁判所の審判によって、生前に被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めたものなど特の縁故があった者に対し、残余財産の全部または一部を与えることができます。
 このためには、相続人がいるとすれば権利を主張しなければならないとされている期間が満了したときから3ヵ月以内に、申立(特別縁故者の財産処分の申立)がなされねばなりません。

7 お墓や仏壇はどうなるか

 お墓や仏壇は一般の相続と異なり慣習に従って、祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継するとされています。
 被相続人が指定すれば、その方が優先します。
 この指定は遺言の形式をとらなくてもかまいませんが、明確な方法をとらないと争いのもとになります。
 慣習が明らかでなく、指定もなく祭祀を主宰すべき者が決まらないときは、家庭裁判所が定めることになっていますので、家事調停または家事審判の手続によることになります。


注1 生命保険金は相続財産か

 被相続人が契約し、被保険者となっていた生命保険の保険金は、相続財産に含まれるでしょうか。
 保険金の受取人として特定の人が指定されている場合は、その人の財産ということになり、保険金は相続財産にはなりません。
 保険金の受取人が「相続人」と指定されている場合も、同様です。
 保険金の受取人が被相続人になっている場合は、被相続人の財産ということになり、相続財産に含まれます。

注2 内縁関係

 このように内縁関係の一方が亡くなった場合、他方は相続人にはなりません。
 しかし、相続ではない別の問題では、内縁だった人の保護が図られる場合があります。一例をあげると次のようなものがあります。

・居住用建物の賃借人と同居していた内縁配偶者または事実上の養子は、賃借人が相続人のないまま死亡したことを知った後1ヵ月以内に賃貸人に反対の意思表示をしない限り、賃貸借関係を承継する(借地借家法36条)。
・労災者災害補償保険法等に基づく遺族補償や、厚生年金保険法に基づく遺族年金については、内縁配偶者にも受給権が認められている。

注3 親等とは

 親等(しんとう)とは、親族関係の遠近を測る尺度です。
 親子間の開きを1親等としますので、ある人からみて、父母とは1親等の開き、祖父母とは2親等の開きがあることになります。

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