月別アーカイブ: 2019年2月

黙秘/山岡遥平(事務所だより2019年1月発行第58号掲載)

 皆さんは、刑事事件の被疑者・被告人の黙秘について、どうお考えでしょうか。

 真実を語らないなんてけしからん、反省していない、しゃべらないのは疚しいことがあるからに違いない、そう思われる方もいらっしゃるかと思います。私も、弁護士でなかったらそう考えていたかもしれません。

 黙秘が理解を得にくい背景には、やはり、刑事事件という、社会的な「悪」やひずみが顕在化した刑事事件における、「悪」と名指された側の防御手段であるということがあるでしょう。しかし、再審請求がされた袴田事件のように、本当ではない自白をしてしまうこともあるのです。
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奨学金の「過大請求」-保証人問題/西川治(事務所だより2019年1月発行第58号掲載)

 奨学金制度を実施する日本学生支援機構(かつての日本育英会)が、保証人に対して本来は残債務の2分の1しか請求できないのに、全額を請求しており、中には知らずに全部返してしまった保証人もいる、ということが問題化しています。
 きっかけは朝日新聞2018年11月1日の『奨学金、保証人の義務「半額」なのに…説明せず全額請求』との報道です(私のコメントも載っています)。

 日本学生支援機構が実施している奨学金の大半は、後で返済しなければならない「貸与制」と呼ばれるものです。制度上、「連帯保証人」と「保証人」を1名ずつ用意し、学生本人が払えなくなったときは「連帯保証人」や「保証人」が返済しなければならないこととされています。
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裁量処分に対する判断過程審査-第5次厚木基地騒音訴訟-/石渡豊正(事務所だより2019年1月発行第58号掲載)

 第5次厚木基地騒音訴訟において、原告らは、防衛大臣が自衛隊機を運航させ続ける決断(行政処分)をしていることについて、裁判所が、その判断過程に合理性があるか否かを仔細に検討するべきだとの主張を展開しています。第5次訴訟でこのような主張を展開することとなったのは、第4次訴訟の最高裁判決における、あまりにも杜撰で、実質的には司法審査の放棄とも言い得るような判断を受けてのことです。

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弁護士への大量不当懲戒請求/嶋﨑量(事務所だより2019年1月発行第58号掲載)

 弁護士への大量不当懲戒請求が報道されていますが、私自身もこの被害者の一人です。2017年11月以降、同一理由で958件もの大量の懲戒請求を受けています。

 これに対しては、私が原告となり、2018年11月以降、懲戒請求者に対する民事訴訟を提起しており(*1)(事前の和解に応じない懲戒請求者は、順次全員を提訴予定)、この件も各種メディアで報道されました。ご依頼者含め報道をみた皆さまから、お気遣の言葉をお掛けいただきました。ご心配をお掛けして申し訳ありません。この場を借りて、少し背景など説明をさせていただきます。

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マンション欠陥訴訟奮闘記/大塚達生(事務所だより2019年1月発行第58号掲載)

 2017年1月発行のたより第54号で、発見しにくい建物の欠陥の例として、私たちが訴訟に取り組んでいる構造スリット欠落問題について、ご紹介しました。今回は、その続報です。

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 まずは、おさらいです。
 建築物が地震や風圧等による水平力に対応する構造の一つとして、柱と梁で構成されるフレームの変形能力によって対応するという構造(耐震壁を設けない純ラーメン構造)があります。 続きを読む