猛毒入り「働き方改革」関連一括法案の「活用法」?!/嶋﨑量(事務所だより2018年9月発行第57号掲載)

◆「働き方改革」関連一括法案は猛毒入り!

 労働側の反対を押し切り、「働き方改革」関連一括法案が成立してしまいました。この法案は、例えるならば、猛毒入りの「毒まんじゅう」です。

 猛毒部分とは、高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)です。一定の高年収者に対して、残業代・休憩など全ての労働時間規制を取り払い、長時間労働を加速させる制度です。安倍政権が「働き方改革」の看板で掲げた長時間労働是正と真っ向から矛盾する制度です。

◆一括法案という欺瞞的手法

 政府は、「働き方改革」の旗印のもと、長時間労働是正策や同一労働同一賃金の非正規雇用の格差是正策を目くらましに用いて、残業代ゼロ実現の突破口として、高プロ制度を成立させました。これは、明白な労働時間規制の破壊です。

 一括法案で、一方では長時間労働是正の規制強化策を喧伝しつつ、他方で規制破壊策を混在して賛否を問われては、民意の反映も不可能です。
 本来全く立法趣旨も異なる制度ですから「一括」法案にすべき理由もありません。別々の法案で審議し民意が問われるべきなのです。「毒まんじゅう」入りのまま「一括」法案として、重要法律を成立させてしまう国会審議は民主主義の冒涜でしょう。
 こんな政治手法を二度と政府が用いないように、政治手法自体へ、社会全体が注視する必要があります。

◆とはいえ、活用を!

 猛毒入りの「働き方改革」一括法案ですが、実は食べられる部分もたくさんあります。
 これら制度は、ともすれば猛毒部分と混同され労働側からも「悪法」と批判を浴びますが、せっかく活用余地がある制度が猛毒部分と混同され活用されないのは、惜しいことです。

◆時間外労働の罰則付上限規制の意義

 「悪法」のレッテルを貼られた典型が、時間外労働の罰則付上限規制です。
 たしかに、その中身(上限の数値)は不十分です(例外的場面では休日労働を含め過労死ラインを超える年間960時間の残業を許容)。

 ですが、不十分であることは「悪法」とは次元が異なります。
 現状の労基法は、労働時間の量的上限規制は一切無く、過労死ラインを超える残業が許容されています。現状は、過労死ラインを超える36協定を締結している企業は溢れており、36協定すら締結されていないケースも珍しくはありません。

 新制度は、抜け道があるとはいえ、時間外労働の原則的上限は月45時間、年間360時間で、参議院附帯決議では「労使は36協定を締結するに際して全ての事業場がまずその原則内の水準に収める努力をすべき」とされています。この原則を徹底できるよう、取り組みを進めることが重要でしょう。

 少なくとも、法案が成立した現状、労働側から例外的な抜け道の存在を強調し、使用者による悪用を宣伝する実益はありません。これまで一括法案に反対していた皆さんも、頭を切り替え、合理的かつ戦略的に、長時間労働是正に向けて積極的な活用を模索してほしいです。
 労働法制改悪でよく用いられる手法(「小さく産んで大きく育てる」)を労働側も活用し、今後よりよい制度へ拡充を狙うことも必要でしょう。

◆隠れ残業横行を許さぬように

 危惧されるのは、上限規制導入を契機に、労働時間を申告させない隠れ残業がさらに横行してしまうことです。隠れ残業が横行しては、業務内容改善にも結びつかず、長時間労働是正は実現できません。現在も、多くの過労死事件は使用者が労働時間を正確に把握せず長時間労働が放置される中で起こっています。

 労基法には、使用者による労働時間の適正把握に明確な法的義務を課してはいませんが、職場では労働時間適正把握の徹底が重要でしょう。労衛法に労働時間把握の規定も新設されたので(新66条の8の3)、労働組合などもこれを活用しつつ、客観的な方法での労働時間把握を徹底させる取り組みが期待されます。

◆最後に

 法律が通ってしまった以上、嘆いても仕方がありません。
 時間外労働の罰則付上限規制以外にも、勤務間インターバル規制の努力義務、非正規雇用労働者による待遇改善の制度、年次有給休暇義務付けなど、一括法案には労働側も活用できる内容が多数あります。ぜひ積極的な活用を検討していただきたいと思います。
 労働組合などの皆さんから、さらに詳細な学習会・講演のご希望やご相談などあれば、お気軽にお声かけ下さい。

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