過労死ゼロに向けて/山岡遥平(事務所だより2018年1月発行第56号掲載)

 今回は、過労死防止に向けた取り組みを紹介します。

1 神奈川過労死等を考える遺族の会が結成されました

 去る平成29年5月25日に神奈川過労死等を考える家族の会が結成されました。この団体は、過労死等防止対策推進法に基礎をおく、全国過労死を考える家族の会に繋がる団体として発足しました。

 私も立ち上げの準備から係わらせてもらったのですが、名称決定にも様々な思いがあり、「過労死等を考える家族の会」となりました「過労死等」には、過労で被災されたご存命の事案も含み、「家族の会」という名称ですが、家族の方の他、被災者ご本人も対象です。できるだけ過労死家族の会であることがわかりやすく、かつ、お亡くなりになった事案だけが対象でないことも示せる名称、ということでこうなったのです。また、被災者ご本人やそのご家族でない方でも、賛助会員もありますので、ぜひ積極的にご参加いただければと思います。

 家族の会の活動としては、過労死家族の会会員の交流、各種啓発活動の他、過労死家族やご本人からの電話相談も行っています。

2 過労死等防止対策シンポジウム

 また、平成29年11月2日、ランドマークタワーにて、過労死等防止対策推進啓発シンポジウムが行われました。このシンポジウムは、過労死等防止対策推進法を受け、厚生労働省が主催して行うもので、今年で3年目を迎えます。厚生労働省主催とはいえ、内容は過労死防止が主なので、私も所属する神奈川過労死対策弁護団と、過労死家族の会が協力しながら受託業者の方や労働局の方と打ち合わせながら準備を進めました。

 シンポジウムでは、弁護団からの事例報告、労働局から現状の報告があった後、神奈川過労死等を考える家族の会代表の工藤祥子さんが、教員の夫を亡くされた経験をもとに、高度プロフェッショナル制度を先取りしたような教員の状況をお話しになりました。また、今年はオール神奈川で講師も呼ぼう、との構想もあり、横浜労災病院の山本晴義先生をお呼びして、「受けよう、活かそう!ストレスチェック」の題で講演していただき、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」(http://kokoro.mhlw.go.jp/)もご紹介いただきました。その後このシンポジウムのメインともいえる、過労死家族の方の経験のお話もお二方よりいただきました。お一人の方は、初めてこのような場でお話ししてくださり、ご家族をなくした辛さと、過労死撲滅への痛切な思いが感じられるお話でした。

 シンポジウムは大変盛会で、定員200名の会議室に、193名もの方が来て下さいました。神奈川では企業の関心も高く、少なくとも過去2年は企業の方の参加者が一般の参加者の方よりも多いという傾向にあり、このシンポジウムで得たことを会社で活かしていってほしいと強く願います。

3 過労死防止等啓発授業・ご遺族のお話

 啓発活動の一環として、これも厚生労働省主催で、中学、高校、大学に過労死家族の方や弁護士がうかがい、授業を行う、という活動も行っています。私も、10月に県立高校へ行き、過労死についてお話しさせていただきました。学生たちは、真剣に私や過労死家族の話をきいて、特に家族の方の話に心を打たれたようです。

 「過労死」と言葉に出したり、書いたりすることは本当に簡単なことです。しかし、その裏にある現実は、被災されたご本人の苦しみ、それを目にしなければならなかったご遺族の苦しみなど、言語を絶するものです。この言語を絶する経験を、ご遺族やご本人がお話し下さるというのは、お話しいただく方にとってかなりの負担だと思いますが、過労死を防ぐため、という思いで、体験をお話し下さっています。

 いつも、その決意に敬意を表するとともに、私ももっと精進しなければと身が引きしまる思いです。

4 最後に

 私も過労死事件を担当していますが、ご遺族の辛さは本当に想像を絶するものがあります。私も生きるための労働で身体を害することが決してあってはならない、過労死はなくさなければならない、と強く思いますし、できることがあればご遺族や被災者の方を支援していきたいと思います。

 なお、過労死問題の現状について、平成28年より厚生労働省が発表している、「過労死防止等推進対策白書」が様々な情報を提供しています。ぜひご参照ください。

Pocket