第5次厚木騒音訴訟 提訴/北村理美(事務所だより2017年9月発行第55号掲載)

 本年(2017年)8月4日、第5次厚木基地騒音訴訟を横浜地方裁判所に提訴しました。原告は、厚木基地周辺住民6063人です。

 神奈川県中央部にある厚木基地は、周りを住宅地に囲まれており、米軍機や自衛隊機が離発着するたびに周辺住民は激甚な爆音に苦しめられています。

 今から半世紀以上前、周辺住民は厚木基地の騒音に対し陳情や人権救済申立てなどの運動をしたものの、改善にはいたらず、司法への救済を求めることにしました。以来、過去4度にわたって裁判が行われています。

 1976年9月、92人の原告の提訴から始まった厚木基地騒音訴訟は、回数を増すごとに原告の人数が増え続け、判決の内容も一歩一歩進んできました。特に2007年に提訴された第4次訴訟においては、横浜地裁において、史上初めて自衛隊機の一部夜間差止めが認められ、報道でも大きく取り上げられました。続く東京高裁においても、自衛隊機の一部夜間差止めが認められ、また、将来の騒音に対する損害賠償も認められました(通常、裁判では過去の損害賠償しか認められませんが、過去3度にわたって騒音による損害賠償を命ずる判決が確定している厚木基地騒音訴訟の経緯等が考慮され将来分の請求も認められました)。

 しかしながら、横浜地裁・東京高裁で認められた自衛隊機の夜間差止めも、東京高裁で認められた将来の損害賠償も、最高裁判所はひっくり返しました。最高裁は、騒音被害の深刻さを認め、「重大な損害が生ずるおそれ」があることを認めながら、その被害よりも、自衛隊機の運航の「高度の公共性・公益性」を優先させたのです。

 裁判所が4度にもわたって繰り返し違法であるとしているにもかかわらず、いまだに騒音は止みません。

 今回提訴した第5次訴訟では、第4次訴訟と同じく、自衛隊機・米軍機の差止め請求と騒音被害に対する損害賠償請求を行います。特に、自衛隊機・米軍機の差止めを求める原告は、第4次訴訟の105名から、1373名へと大幅に増えました。差止めを求める原告の人数がこれほど増えたことこそ、騒音被害をお金で解決するのではなく、飛行差止めという抜本的解決を求めたい、それが多くの住民の願いだということを表しています。

 そして、本訴訟の大きな問題点は、第1次訴訟の最高裁判決が、国の「支配の及ばない第三者の行為」だとして、内容の審理にすら入らず門前払いをした、米軍機の差止めをいかに認めさせるかという点です。米軍機の差止めが認められなければ、騒音の抜本的な解決にはなりません。

 第5次厚木基地騒音訴訟弁護団には、当事務所から私も含め7人の弁護士が参加しています。騒音がない当たり前の暮らしを送りたいという周辺住民の思いを実現すべく、知恵と力を振り絞っていきたいと思います。

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