非正規労働者の育休取得/北村理美(事務所だより2017年1月発行第54号掲載)

 マタハラという言葉が世間に浸透してからだいぶ時間が経ちましたが、非正規労働者について、以下のような調査結果があることをご存知でしょうか。

  パート・派遣労働者のうち、出産後も働き続けた労働者の割合は18%、育児休業取得率はわずか4%だというものです(国立社会保障・人口問題研究所 「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」2010年)。なお、同調査によ ると、正社員については、出産後も働き続けた人は52.9%、育児休業取得 率は43.1%でした。

 2016年3月29日、男女雇用機会均等法や育児介護休業法の改正を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立しました(2017年1月1日施行)。

 その内容は、①子の看護休暇(年5日)の半日単位での取得(従来は1日単位での取得のみ)、②育児休業の申し出ができる有期契約労働者の要件緩和、③妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働 者の就業環境の整備の新設、などです。

 ③については、従来も、妊娠や出産等を理由とした不利益取扱いは禁止されていました(男女雇用機会均等法9条3項)。さらに、本改正により、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚などによる就業環境を害する行為を防止するための雇用管理上必要な措置をとることが、新たに事業主に義務づけられました(派遣先で就業する派遣労働者については、派遣先も
事業主とみなして、上記防止措置義務を適用することになっています。)。これは、いわゆるマタハラ防止措置です。

 有期契約労働者にとって意義があるのは、②有期契約労働者が育児休業を取得する要件が緩和したことです。

  有期契約労働者が育児休業を取得するのが現実的にいかに困難であるかということが統計でもはっきりとあらわれていることは冒頭で述べたとおりです。その理由の一つとして、改正前の法律では、「子が1歳になったあとも、雇用継続の見込みがあること」が育児休業取得の要件となっていたことが考えられます。

  しかし、本改正により、(ⅰ)当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること、(ⅱ)子が1歳6ヶ月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない場合であれば、育児休業を取得できることになりました。

 すなわち、「子が1歳になったあとも、雇用継続の見込みがあること」という要件はなくなり、子が1歳6か月になるまでに不更新となることが明らかでなければ、育休が取得できることになりました。労働契約が更新されるかどうかわからない人でも、育休が取得できるようになったのです。

 この改正により、有期契約労働者の育休取得が現実的に増えるかどうかはわかかりませんが、一歩前進したことは間違いないでしょう。

 現在、私は妊娠後に雇止めされた有期契約労働者の裁判を担当しています。彼女は、妊娠したら雇止めされたことを周りの人に話したら、「契約社員だからしょうがない」、そんなことを言われたそうです。女性の非正規労働者の割合は半分を超えているといわれています。正社員になりたいのになれない現実があります。

 つい最近の報道によると、子どもを産んだあとも仕事を続ける女性の割合が初めて5割を超えたとの調査もありました。正規労働者であれ、非正規労働者であれ、出産しても働き続けたい女性が働き続けられる、そんな社会にしていきたいと思います。 

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